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第109話 コイゴコロ 3-3
肌に触れる服の生地にさえ身体がざわつくような、明らかな異常な反応。そこまで回らない頭で考えて、掴んでいた本を思いきり力任せに放り投げた。テレビ画面に当たったそれはバサリと音を立てて床に転がる。
「あの野郎、なにが、いつもと違うシロップだ」
原因に気づくとそれからの行動は早かった。もたつく身体でソファから下りるとまっすぐに風呂場へ向かう。扉を開けると中からはシャワーの音が響いている。それでもお構いなしに近づくと、風呂場の戸を勢いよく開いた。
突然開いた戸に瑛冶は目を丸くして驚きをあらわにしている。いきなり目の前に現れた俺に理解が追いついていないようにも見えた。けれど俺はそのまま風呂場に足を踏み入れて真っ裸の男を壁際に追い詰める。
「ひ、広海先輩? どうしたの? 服、濡れるよ!」
「あぁん? なにがどうした、だ。ぬけぬけと言ってんじゃねぇよ。お前、俺に一服盛っただろう」
「えっ! 嘘! あれ効いたの? 俺も飲んでみたけどまったく変化なかったのに」
「おい、こら待て。てめぇはよくわからねぇもんを人に飲ませたのか! ふざけんな!」
「ごめんなさい! でも九条さんに確認は取りました! 身体には絶対に害はないって!」
「やっぱりあの男か!」
嫌な予感がしていたんだ。あの男がまともなものを寄こしてくるはずがないって。だが想像以上に最低最悪だ。ふざけたもんを寄こしてきやがって、大体こいつもこいつだ。興味本位で人を試すとかありえねぇだろう。
おたおたとして逃げ場を探す瑛冶は、押し進む俺に道を塞がれて誤魔化すような乾いた笑みを浮かべる。その顔に腹が立ったので片手で顎を掴むと無理矢理引きつけて口を塞いだ。驚きに目を見開いたのは気づいたが、構わずに口の中に舌を滑り込ませる。
「んっ、ひろ、み……先輩! 待って!」
口内を無遠慮に撫で回したら肩を跳ね上げた瑛冶が俺の身体を押し離す。顔を真っ赤にしながら、俺をじっと見つめるその表情にますます腹が立ってきた。なんとか隙を突いて逃げようとする男の両脇に手をついて動きを封じる。
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