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第50話
10個作ったパンを、一気に7個食べて、彼はやっと満足そうな顔をした。
「よく食うねぇ」
ちょっと呆れた。目の前でフードファイト見て気分。
「絶品だ、さすが俺の専属シェフになる男だけある」
腹を撫でながら笑う。
「あのなぁ、いつからお前の専属シェフになったんだよ」
確かに再会のきっかけは、シェフを探していたとかいう触れ込みだったけど。
「え、違うのか?」
わざとらしく目を丸くしている。
「違うね。契約書書いてねぇし、そもそも許可してねぇし」
わざと突っぱねてみる。
「契約書なんか必要ないだろ、俺のそばでこうしてパン作ってくれたらいいんだから」
「何それ、プロポーズじゃあるまいし」
何の気なしに言ったのだが、目の前の男は一時停止ボタン押されたみたいに、ぴたりと動きを止めてしまった。
「……なんだよ」
あまりに動きが急に止まったから、ちょっと身構えてしまう。
「なら、きちんとプロポーズしたら、お前はずっと俺のそばにいてくれるのか?」
「はっ?」
話の流れに、ちょっと背筋がシャンとなる。
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