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第63話
「後は俺がナイトになるだけだな」
「ナイト?」
咄嗟に何のことかわからなくて、夜がどうしたんだろうと思った。
けれどすぐに違う方のナイトだと理解した。
「お前を泣かさないように、お前を守るナイトになるんだ」
まるで少年のような事を言っていた。
「何だそりゃ、泣いてねぇし」
忘れるわけがない。
あの夜ベッドで少し泣いたことを。
でも恥ずかしいから言わない。
「いや、泣いてただろ」
「泣いてねぇって。泣くわけねぇじゃん、いい大人の男がさ」
「忘れたのか? ほら、初日の夜、ベッドで」
しっかり覚えてやがった!
「あーーー聞こえないーーー」
無理矢理自分の耳を塞ぐと、何だそれ面白え!と真似してくる始末だった。
ナイトだか何だか知らないけど、彼の存在が俺のそばにあるだけで、かなり心強いだろう。
甘えていいんだろうか。
甘えたい気持ちとまだスッキリしない気持ちが反発していた。
「守るったって、アンタは海外で、俺は日本だろ、無理じゃん」
また突っぱねてみると、突き飛ばしたのにすぐに起き上がる瞬発力を見せる。
「俺の会社を日本に本部を移せばいい。そしてお前と暮らす。それなら可能だろう」
「はぁ~?」
面白いこと言うな。無理だろそんなの。
半笑いで受け取って、せいぜい楽しみにしてるよと返す。
「そしたらマジでお前と暮らしてやるわ」
上から目線で笑いながら言うと、俺に指をさしながら「その言葉、絶対忘れんなよ」と言うのだった。
彼とそういうやり取りするのも、本当に楽しいし心地いい。
突っぱねたって、やっぱり、気持ちに嘘ってつけないんだなぁ。
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