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第1話

(あ〜…やべぇ、これはダメなヤツだ……) うんざりとそして遣る瀬無く、『ハズレ』の三文字が日吉 慎(ひよし まこと)の脳裏に浮かび上がった。 今夜の寝床はホームセンターで格安で売っていた自宅のパイプベッドとは比べ物にならないほど寝心地はいいし、窓から見える夜景も最高に綺麗だ。 ホテルのルームサービスで出された食事の数々は、慎の目にも鮮やかに映った。 慎の御用達であるアパートの真下にあるコンビニ弁当とは一味も二味もちがう。 値段に見合う、いい食材を使っているのだろう。 一流シェフたちが腕をふるっただけあって絶品だったし、大好きな酒も最高に美味かった。 流石、政治家をはじめとした著名人が御用達にしているだけはあって、ワインの種類も豊富だ。 俺をエスコートするにはまずまずの選択。 そう納得できる贅を凝らした代物が部屋の至る所で感じられ『百点満点』まであと少しまで行ったのに、一番肝心なものが最悪だった。 自分の快感を追う事で精一杯の馬鹿は息を乱しながら、痛いほどに鷲掴んだ慎の腰をがむしゃらに突き上げては引き抜くを飽きもせずに繰り返している。 それもひどく単調な動きで。 はっきり言ってテクニックなんてありはしない。 あるのは激しさだけ。 コイツは慎が務める芸能プロダクション所属の若手俳優で、今夜遊び相手に選んだ男である。 年齢は慎より五つ下の22歳だったか。 元はモデルとしてスカウトされ、そのあと役者に転身。俳優としての経験は浅いながらも実力もまぁまぁあり、ドラマに出演させればスポンサーも納得の数字を打ち出すくせに、なのに、なのに、このテクの無さは、なんて残念なんだろうと嘆かずにはいられない。 (そういえばコイツのベッドシーン見た記憶がねぇなぁ…。まぁ、おそらく事務所がやらせねぇようにしてんだろうが、やらなくて正解だな。そういうシーンは知らず知らずに『素』がでちまうからなぁ。コイツはやったら最後、絶対に視聴率落ちるぜ) 元はスタイルの良さで売っていた上に、今は芸能人という肩書きもある。 それだけに見た目は文句なしだ。 若者特有の溌剌としたオーラをまとっており、万人ウケする美貌は合格点だったというのに、今の姿は美しさのかけらもない。 汗水漬くになって、髪を振り乱して一心不乱に快楽をむさぼる、ただの獣だ。 さぞかし気持ち良くしてくれるんだろうと期待していただけに酷い裏切りにあったようで、四つん這いに突っ張った慎の腕は、怒りで微かに震えていた。 明日はせっかくの休日だし、久々に朝まで遊ぶかなと余計な欲を出したのが間違いだったのか? ここ数日、誰にも抱かれてなくて欲求不満気味だったのだが、こんなんだったら新しいのに手をださないで、キープしてるセフレの誰かを呼び出せば良かったと、後悔が後から後から湧き出て来る。 あー、マジ帰りたいーーーー。 「日吉さんっ…日吉さん…っ、スッゲェいい……あんたの中、よく締まるし、柔らかくて気持ちいいしーーーぁあ、マジ最高ですっ」 そりゃ良かったな、こっちは最低最悪な気分だけどなーーーとは心の中でつぶやきながら、うまい飯を食わせてもらった礼として、溢れそうになるため息を理性で殺し、大人のマナーとして気持ちよさそうに喘いでやる。 せめて早く終わってくれよと願いながら、一刻も早くイカせるために繋がった腰も自ら振るってやった。 もちろん、感じているわけじゃない。 後ろにねじ込まれている屹立は慎好みの巨根なのに、見掛け倒しとはまさにこのことだろう。 ただデカイだけ。 誠実そうな見た目とは裏腹にかなりの遊び人で、この巨根に何人もの女優が泣かされたと噂に聞いていたというのに……本当に噂とはあてにならない。 これで泣いたっていうのは、下手すぎてでた怒りの涙なんじゃないんだろうか? こんなことなら玩具で遊んでいた方がまだ有意義だ。 考えれば考えるほどイライラしてきたし、はっきり言って退屈だ。 タバコでも吸って気を紛らわしたいところだが、生憎と無駄に激しく抽送を繰り返されているせいで、シーツを掴むので精一杯だ。 (あー…マジ勘弁してくれ) 媚肉を擦りあげられる感触も、尻に下肢を打ち付けられる感触も、何もかも不快でたまらない。中途半端な快感しか得られないせいか、慎の屹立は悲しそうに力なく項垂れている。 (コイツのテクじゃ、イケねぇ…) いや、頑張ればどぉーにかイケはするだろうが、快楽指数はかなり低いことだろう。 早いとこ結着をつけて、セフレの誰かに連絡を取って、この後口直しに別の男に抱かれたい。慎が望むように、気持ちよくイカせてくれる相手は慎重に選ばなければならない。 となると相手はだれがいいかーーー。 誰がいいかなと考えつつ、こんな時に思い浮かぶのはいつもたった一人しかいない。 イケメン好きの慎の真贋に敵うそこそこの美丈夫で、精悍という言葉がよく似合う少し垂れ目の色男。 もちろん申し分のない美ペニスの持ち主だ。 程よく張り出た亀頭に、びっしりと浮かび上がる血管の凹凸。 あれに突き上げられたときの壮絶な悦楽を想像するだけで、よだれが出そうになる。 (アイツのことだし、今夜も多分自宅か?いや、この時間だとまだ行きつけのバーにいるって可能性もあるなぁ。だとすると、ここからだとタクシー飛ばして30分ってとこか……) ある程度の行動範囲を知り尽くしている相手だ。 この後いかに効率よくアイツを捕獲するか算段を立てながら、一刻も早くこれを終わらせるために、慎はケツの中の屹立をわざと締め付けてやる。 それをつぶさに感じ取ったのか、ひとまわりでかく成長したペニスが、どくどくと忙しないリズムを刻み始める。 いいぞ、後一押しだーーーー。 「日吉さんっ…っく、はぁ…っ」 「…ぁあ、あ…ぁあ、松岡っ、もう、…もうっ…俺っ、もう我慢できねぇっからぁあっ……!」 「いい、んですか……?おれ、ゴムつけてませんよ?本当にいい?…っ…あんたの中に、このまま出しても……!」 「いいから……ん、ぁあっ、あっ……いいから、早くしろっ!」 (なんでもいいからさっさと出せっつてんだろっ!!) もうこの男に対する関心や期待値が限りなくゼロに等しくなっているせいだろう。 嬉しそうに中に出していいかと訪ねる声さえ憎く感じてくる。 最初からゴムをつけなかった時点で中に出す気満々だったくせに、いまさら紳士ぶるところもマイナス点だ。 「…出、ますっ!おれ…ぁあ、イク…ぁあ、クッ、イクッ!!」 「あっあっ、…ぁあ、んぅあーーーーーーっ!!!」 一際激しく築き上げられた直後。 びゅくびゅくびゅくぅーーー…と、体を濡らされていく感覚に自然と慎は背筋を震わせた。 (あぁ、くそ……めちゃくちゃ出しやがって…どんだけ溜め込んでたんだよコイツ……マジで気色悪ぃ……。こんな奴とはさっさとおさらばして、早くアイツに抱かれてぇなぁ……) 「……ぅ、熱っ、…ん、ぁあ」 「…すげぇ、気持ち、い…日吉、さん。もう一回だけ……もう一回だけでいいんで、このまま続き、してもいいですかーーー?」 「…馬鹿か?……け、ねぇ、…だろ…」 「え?あ、すみません。聞こえなかったんでもう一回いいですか?」 「…………いいわねけぇだろっつてんだよ!!黙って喘いでやってりゃ図に乗りやがって、この下手くそが。さっさとそれ、抜けっつってんだよ!!」 断続的に吐き出しながら、まだ足りないと催促するように胎内を我が物顔で掻き回してくる男を振り向きざま後ろ足で蹴りつける。 浴びせてやった怒声に虚をつかれた隙を狙い、慎は己に穿たれていた屹立を一気に引き抜いたーーーー。

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