146 / 288
Ⅵ【ファウスト】第11話
「驚かせたかい?言ってみたかったんだ。『夫婦の営み』って言うと、結婚した実感が沸くだろう」
「……そ、そうか?」
まぁ、確かに。結婚しないと夫婦じゃないから『夫婦の営み』って言葉は使えないよな。
ビックリしたぁ~。
てっきり、本当に夫婦の営みをする事かと★
連れて来られたのは、ハルオミ…さんの部屋
ここはベッドの上だ。
αクーデターを知ってしまった俺は、最重要機密を守るための監視対象として……ハルオミ…さんの妻になった。
「ナツキ」
「は…はい」
声が上擦っている。
一時間前まではユキトといて、まさかこんな事になるとは夢にも思っていなかった。
「なにを緊張してるんだい?可愛いね、君は」
背中から腕を肩に回されて、首元に顔を埋められる。
「これから何百、何千と、こんなふうに夜を一緒に過ごすんだ。肩の力を抜いてくれるかな」
「……は…はいっ」
俺、まだ心の整理がついてない。
生きるためとはいえ、俺の選択はこれで本当に良かったのか。
けれど。
ハルオミ…さんを殺す事なんてできなかった。
どうすれば良かったんだろう。
俺はまだ迷っている。
「ナツキは夫婦の営み、したい?」
「えっ」
「しないとは言ってないよ」
そそそ、それはッ
つまりッ
俺が、ハルオミさんを受け入れる?
俺はΩだから……ハルオミさんに挿入されるんだ。
「俺っ」
まだ気持ちの整理がついてなくて。
「……欲しいと言ってくれたら、公務を放棄するんだけどね」
つまり、それは?
「マルク最高責任者として指示に当たらねばならない。本艦は潜航を開始したとはいっても、いつ再び攻撃されるとも限らない。沼津港に着くまでは、気を抜けない状態だ」
「あぁ、分かっている」
俺も同じ判断だ。
「敵の攻撃を避けるため、ギリギリまで潜航する。問題は駿河湾だな。湾に入れば浮上しない訳にはいかない。
浮上と同時に、集中砲火を浴びる危険がある」
「いい読みだよ。君はΩの兵士にしておくには勿体ないね。
私がシルバーリベリオンならば、君に部隊の指揮を任せているよ」
「ぁっ」
俺はここでは、あくまでもΩの一兵士だ。
シルバーリベリオンであると知られる訳にはいかない。
「すまない。思った事が口に出てしまって……」
「謙遜は必要ない。君の言った通りだ」
だからね……と。耳たぶを舐められて、カッと頬に火が上った。
「横浜戦線を使う。もう一つは……お楽しみ、といったところかな」
ハルオミさんの頭の中には、既に策が出来上がっている。
さすがはシュヴァルツ カイザーだ。
「私は公務に戻るが、いいかい?」
「気をつけてな」
「そうじゃなくて……」
俺、間違った事を言ったか?
「確かめておかなくて、いいのかい?」
「なにを?」
「私が君の夫たるに相応しい男であるか……」
「どういう事だ?」
地位で夫を決める訳ではないが、ハルオミさんは日本国 副総理だ。
これ以上、なにを望むというのだろう。
「私は君を満足させられるかな?」
「ハ…ンっ」
当たってる。
ハルオミさんの…雄が、腰にっ。
ともだちにシェアしよう!