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Ⅵ【ファウスト】第11話

「驚かせたかい?言ってみたかったんだ。『夫婦の営み』って言うと、結婚した実感が沸くだろう」 「……そ、そうか?」 まぁ、確かに。結婚しないと夫婦じゃないから『夫婦の営み』って言葉は使えないよな。 ビックリしたぁ~。 てっきり、本当に夫婦の営みをする事かと★ 連れて来られたのは、ハルオミ…さんの部屋 ここはベッドの上だ。 αクーデターを知ってしまった俺は、最重要機密を守るための監視対象として……ハルオミ…さんの妻になった。 「ナツキ」 「は…はい」 声が上擦っている。 一時間前まではユキトといて、まさかこんな事になるとは夢にも思っていなかった。 「なにを緊張してるんだい?可愛いね、君は」 背中から腕を肩に回されて、首元に顔を埋められる。 「これから何百、何千と、こんなふうに夜を一緒に過ごすんだ。肩の力を抜いてくれるかな」 「……は…はいっ」 俺、まだ心の整理がついてない。 生きるためとはいえ、俺の選択はこれで本当に良かったのか。 けれど。 ハルオミ…さんを殺す事なんてできなかった。 どうすれば良かったんだろう。 俺はまだ迷っている。 「ナツキは夫婦の営み、したい?」 「えっ」 「しないとは言ってないよ」 そそそ、それはッ つまりッ 俺が、ハルオミさんを受け入れる? 俺はΩだから……ハルオミさんに挿入されるんだ。 「俺っ」 まだ気持ちの整理がついてなくて。 「……欲しいと言ってくれたら、公務を放棄するんだけどね」 つまり、それは? 「マルク最高責任者として指示に当たらねばならない。本艦は潜航を開始したとはいっても、いつ再び攻撃されるとも限らない。沼津港に着くまでは、気を抜けない状態だ」 「あぁ、分かっている」 俺も同じ判断だ。 「敵の攻撃を避けるため、ギリギリまで潜航する。問題は駿河湾だな。湾に入れば浮上しない訳にはいかない。 浮上と同時に、集中砲火を浴びる危険がある」 「いい読みだよ。君はΩの兵士にしておくには勿体ないね。 私がシルバーリベリオンならば、君に部隊の指揮を任せているよ」 「ぁっ」 俺はここでは、あくまでもΩの一兵士だ。 シルバーリベリオンであると知られる訳にはいかない。 「すまない。思った事が口に出てしまって……」 「謙遜は必要ない。君の言った通りだ」 だからね……と。耳たぶを舐められて、カッと頬に火が上った。 「横浜戦線を使う。もう一つは……お楽しみ、といったところかな」 ハルオミさんの頭の中には、既に策が出来上がっている。 さすがはシュヴァルツ カイザーだ。 「私は公務に戻るが、いいかい?」 「気をつけてな」 「そうじゃなくて……」 俺、間違った事を言ったか? 「確かめておかなくて、いいのかい?」 「なにを?」 「私が君の夫たるに相応しい男であるか……」 「どういう事だ?」 地位で夫を決める訳ではないが、ハルオミさんは日本国 副総理だ。 これ以上、なにを望むというのだろう。 「私は君を満足させられるかな?」 「ハ…ンっ」 当たってる。 ハルオミさんの…雄が、腰にっ。

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