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第188話 休息 4-4
「……ただ、なんかこうモヤモヤして、苛々して、少し気分が落ち着かないだけだ」
眉間にしわを寄せてそう呟く彼は、相変わらず自分の感情整理は苦手なようで、聞いてるこっちが恥ずかしくなる。よく俺に恥ずかしいことを言うなと言っているけれど、無意識な彼のほうがよっぽど照れくさい。
「ほんと佐樹さんは天然だな」
「は? どこが」
「全部」
真っ正直で裏表がなくて、素直で優しくて可愛い人。そんな人にやきもちを妬かれたりするのがこの上なく優越だ。重苦しく心に張り付いていたものが、ほんの少し剥がれ落ちたような気がした。
「そうやってまた、お前はすぐ人のこと馬鹿にする」
「全然してませんよ。というより俺は佐樹さん馬鹿にしたことないけど」
不服そうに眉を寄せ小さく唸る彼に、笑って首を傾げればなぜか何度も背中を叩かれた。
「……佐樹さん」
「今度はなんだよ」
「雨、降ってきましたね」
ぽつりと頬に落ちた雫に気づき空を見上げると、生温い風が吹き抜け、次第に降り注ぐ雫の数が増えていく。
「なんだ、天気予報もあながち間違いじゃなかったな」
「さっきまで晴れてたのに、最近の天気ってわからないですよね」
突然降り出した雨に、二人で空を見上げていると、周りは慌ただしく屋根を求めて移動し始める。青空だった空はいつの間にか雲に覆われて、次第にどんよりとした雨雲に変わった。
「これかなり来るぞ」
「え?」
独り言のような呟きに振り向くと、彼は急に俺の腕を取って走り出した。そのあとを追いかけるかのように雨足は強くなっていく。
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