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第53話
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お弁当箱の次は布団を買いに行ったのだけど、そこで事件が起こった。
「んー……どうせ買うなら、こういう方がいいかな」
先生が顎に手をやりながら眺めているのは、ソファベッドというもの。その名の通り、普段はソファとして寝るときはベッドとして使うものらしい。
そして、そのお値段が事件だったのだ。
(ごっ、五万円……!)
値札を見て驚愕する。自分の為にこんな大金を払ってもらうわけにはいかないと、先生の袖をクイクイと引っ張った。
「せ、先生っ」
「ん?どうした?」
「俺、安いので良いですっ」
周りを見れば一万円くらいのもあるし、布団一式なら安いので数千円だ。それなのに先生は納得してくれない。
「でも、安いと睡眠の質が悪そうだろ?」
「い、良いです!俺どこでも寝れますっ」
「二人でゆっくりしたいときにもちょうど良いし、一石二鳥だと思うんだけどなぁ」
(二人で、ゆっくり……)
先生と二人で肩を並べてテレビを見る姿が頭に浮かぶ。そんな魅力的な光景につい心が揺らぎかけたけど、慌てて頭を振って邪念を消した。
「で、でも、やっぱり──」
「よし、決めた。買おう」
「先生!?」
さっきみたいにスタスタと店員さんを呼びに行って、そのままレジまで行ってしまった先生のことを呆然と見つめること十数分。
「今日中に届けてくれるって」
戻って来た先生が楽しそうに俺に告げる。対して俺は罪悪感で押しつぶされそうだった。
「うう……すみません……」
「何で心が謝るの。俺が欲しかったんだからいいんだよ」
うなだれる俺の背中を押して「じゃあ、次行こうか」と言った先生に、様々な売り場に連れてかれ、料理するときに着るエプロンやら何やらと、色々買ってもらってしまった。
(先生って、意外と強引かも……)
帰りの車で、後部座席にある袋たちを見ながらそんなことを思う。
先生に散財させてしまったのは本当に申し訳ない限りだけど、いつも優しい先生の新たな一面を垣間見ることが出来て、今日はとても充実した一日だった。
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