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番外編 風邪ひきさん④

 恥じらいのある顔で、それでも欲望に抗えないのか、心は掴んだ俺の手ごと口元に持っていって、綺麗なピンク色の舌で、丁寧に精液を舐めとっていく。  甘いアイスでも舐めるみたいに顔をほころばせる心だが、菓子を食べる時とは違い、尋常じゃない色気をまとってる。見てるこっちがイケナイ気持ちになるような、そんな色香。  「ん……んぅ、おいし……」  そこで、プツン、と何かがキレた音がした。  俺は半ば無意識に、クルリと心の身体を反転させて腰を持ち上げ、再び硬度を増したソレを赤みを帯びた後孔に当てがった。ソコは押し当てるだけで、吸い付くようにヒクヒクと動き、ますます俺の興奮を煽ってくる。    「え、ひろ、くん……?まっ──っ!」  制止の言葉を聞き入れずに一気に奥まで貫けば、心はシーツをギュウッと握りしめながらビクビクと震えた。同時に中が激しくうねり、自身に並々ならぬ快感が襲う。  なんとか耐えて、震える細い腰をツーと指でたどる。心はそれにさえ感じるのか、嬌声をあげながら何度もビクビクと身体を跳ねさせた。  「は……挿れただけでイッちゃったんだ?」  「だ、だって、イッたばっかっ」  「可愛い……ほら、舐めて良いよ」  「んぅっ」  自分の精液をつけた指を、心の口に突っ込む。最初こそ戸惑った様子を見せた心だが、次第に目をとろーんとさせて、クチュクチュと指に舌を絡ませてきた。  「ん……んぅ、ん」  「嬉しそうに締めて……そんなにこの味好き?」  「んぅ、すひぃっ……」  「苦くないんだ?」  「らって……ひろくんのらからぁっ」  「は……ほんと、可愛いね」  「あぅ……んっ、んっ」  口の中の指を動かして弱い舌裏を弄りながら、抽挿を開始する。臀部に腰がぶつかるたびに、淫らな水音が部屋中に響く。二度目といえども、心の中はきつく締まって俺のに絡みつき、気を抜いたものならすぐに果ててしまいそうだった。    「あー、きもちい……」  このまま中に出してしまえたら。  そんな欲望がむくむくと顔を出したが、頭の片隅に残ってるストッパーが、そんな自分勝手な真似を制御しようとする。しかし、そんな脆いストッパーを壊すのは、いつだって俺の可愛い恋人で。  「あっ、あうっ……せ、せんせぇっ?」  「……ん?」  「んあ……なかっ、こんどは、なかほしぃっ」  「……っ」  「ひろくんのっ、ほしいのぉっ」  「……ほんとこの子はっ」  「あ、ああっ!」  「はっ……」  前立腺に狙いを定めて一気に突き上げると、後孔が激しく収縮を行い、それとほぼ同時に、一度目にも劣らない激しい欲が中で放たれた。  初めて経験する、一枚の薄い壁を隔てているときとは比べ物にならないくらいの強い快感。俺は目をつぶり、黙ってその快感に身を委ねた。  「……っ、ふ」  最後の最後まで出しつくしてから自身を抜けば、心は力なく仰向けになって両手を伸ばし、掠れた声で「だっこ……」と呟いた。要望通り、覆いかぶさるように抱きしめると、キュッと背中に回る小さな手。  「なか……あったかい……」  「心……」  「ひろくん……うれしい……」  随分と幸せそうに目を細める心が、苦しいくらいに愛おしくて、俺は出来る限り優しいキスを落とし、力いっぱい抱きしめた。  「ひろくん……?」  (好きだよ、心)  そうして俺は、微睡みの中へ溶けていった。

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