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第6話
気づけば4人は既に何事かを真剣に話し始めていて、完全にボクからは気が削がれていた。
―――逃げるなら今がチャンスかもしれない。
そう思ったボクはこっそりと辺りを見回し、捕まらずに逃げられるルートを探ろうとした。でも周りを見てすぐに愕然とする。
やけに静かだと思えば横を避けるように走行していたハズのバイクは皆、エンジンを掛けたまま停車していて全員がこちらの様子をじっと窺い見ていたのだ。
そしていつの間にかボクたちのほんの数メートル先に、真っ白な大きい乗用車が横付けにされていた。周りとは違う空気を放つソレに何故だか急速に惹かれ、ボクは目が釘付けになる。
するとボクの視線に気づいたのか、金髪の男の子が嬉しそうに説明してくれた。
「あれが俺らの総長の車。すっげカッコイイっしょ」
「バカ虎汰ッ、なに呑気なコト言ってやがる! 俺ら総長の車止めちまったンだぞ!!」
横から赤い髪の男が凄い剣幕で怒鳴りつけると、金髪の男の子は短くあっと声を洩らして途端に項垂れる。
どうやら彼は叱られた事よりも、“総長の車を止めたこと”がショックで落ち込んでいるようだ。
恐らくこれは彼らの中ではあってはならない事らしい。他の二人も先ほどとは打って変わって、緊迫した空気を漂わせていた。
みんなが固唾を呑んで見守る中、真っ白な高級乗用車の後部ドアが静かに開く。
中から現れたのは190cmはありそうな長身の男の人だった。スラリと長い脚を車外に出すとゆっくり降り立ち、風に靡く少し長めの白銀に輝く前髪を緩慢な動作で掻き上げる。
そして鋭く尖った眼差しをこちらに向けると、短い溜息を吐いて静かに歩み始めた。
「「「「総長お疲れさまですッ!!」」」」
周りは一斉に頭を下げて“彼”に敬意を表す。
その間もボクは息をするのも忘れて彼に魅入ってしまっていた。
まるで動く絵画を見ているようだった。
全身を仕立ての良い真っ白なスーツで包み、颯爽と現れた彼……。
何者をも拒絶する空気を漂わせているのに、彼の甘いマスクは男女を問わず惹きつける魅力があった。
スッと通った鼻筋に切れ長な瞳、大きくて薄い唇は男なのに何故か色気があり、一度魅入ると永遠に目が離せなくなりそうで少し怖い。
この世にこんな“美しい”という形容詞が似合う男の人がいたなんて……。
けれどボクが何よりも彼に惹きつけられたのは他にある。
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