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Ⅲ 知らない内に溺れたみたい② 【完】
ここは生徒会室の真下にある資料室
部外者は入れない。
眉目秀麗の黒髪青年は誰?
俺を見下ろす、深層に氷の針を突き刺す瞳
……どこかで見たような気がするんだけど~。
「ベル様、ご立派になられまして」
「………って★チビッ子なのーっ」
なんで、チビッ子急成長したんだ?
牛乳飲み過ぎか?
「パートナーの絆が深まる事により我は育つ。この調子で絆を深めて我を育てよ」
そうなの~★
「ご心配には及びません。俺たちは心を通じ合わせております」
「うんうん」
モドキをやっつけたコンビネーション、バッチリだもんね。
「キスも交わしましたので、次の段階に進む予定です」
「うんうん」
………次の段階?
「って、なに?」
「鈍い奴だな」
チュッ
耳朶に唇を落とされて、熱い吐息がひだを舐めた。
「当然セックスだ」
………………はい~ッ?!
「なんでそうなるんだっ」
「俺にキスされても嫌じゃなかったろ」
「………うん」
頷いた俺、耳まで赤い。
「決まりだ。お前が応じてくれないと、俺の願いも叶わない」
「そう言えば、飛鳥の願いって?」
ベルの投げた本を飛鳥がキャッチする。
この本だけ、埃だらけの資料室で唯一埃を被ってない。
「読み込んだからな」
飛鳥が見せてくれた本は……
「オメガバース?」
「Ωという性別になると男でも子供が産めるらしい」
利器を与えて怠惰に人間を陥れる悪魔 ベルフェゴール様の力を借りる事にした。
「大和、ベル様の力でΩになれ!」
「嫌だァッ」
俺はっ。
「普通のセックスじゃないと嫌ァァー!!」
「つまり、それは……」
Ωじゃない
「今の大和のままでセックスしたいという事だな?」
反論は全部、吸い取られて飲み込まれた。
唇を塞いだ、あたたかな唇
「可愛いぞ」
チュッ
俺は悪魔よりも厄介な天使に見初められてしまったらしい。
だって、こいつは悪魔のキューピッドが結んだ運命のライバルで、パートナーで……
将来の『番』予定
拒絶できない俺も、魔力にやられちゃってる。
チュッ
これからも一緒に悪魔育てような!
―完―
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