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温もり
そういって見送ろうと歩いた時、近くにあった椅子の足に引っ掛かって視界が揺れた。
と同時に何か暖かいものに包まれた。
数秒後、それが歩叶君の手、しかも手袋を着けていない手だと気付いた。
「触るな!」
ドスン!
鋭い音が響く
「イッテ!」
その声の主は悲しそうな顔をしてこっちを見ていた。
「あ…うそ…ご、ごめんね。ごめんなさぃ…悪気は無いんだ…ごめんごめんごめん…」
すると消毒液の匂いのする白い布が宙を舞ってそれと共に僕は包まれた。
徐々に温かみが増していった。
「彼方は悪くない…勝手に触って悪かったな…」
頭上から聞こえて来る声に安心してその身を委ねる。
「違う。僕がこんな体質じゃ無かったら…」
自分の腕を抓る
しかし、布越しではあったものの、その手はあっさりと止められてしまった。
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