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居間のドアを開けると、甘い花のような香りがした。
「アルフリート…?」
「…ルド…」
「アル…!」
ソファーに沈み込むようにアルフリートは横たわっていた。
「ごめ…なさ…」
「謝らなくていい」
潤んだ瞳から、大粒の涙が零れる。
リカルドに負担を掛けなくなかった。
迷惑を掛けなくなかったのに、と…。
「謝るな。謝らないでくれ」
「んぅ…」
瞼に口づけを落とし、涙を吸う。
それだけでアルフリートの吐息は熱を帯び、肌から立ち上る香りも濃さを増した。
「ダメ…、ルゥ…離して…」
「駄目だ。離してやらない」
伝い落ちる涙を吸いながら、口づけが首筋へと移る。
「お願い…、僕は…」
「いいんだ。もう、誰にも気を遣わなくていい」
「でも…っ」
「お前の気持ちを知っても、誰も怒らないし悲しまない」
「……っ」
「気になる事も言いたい事も沢山あるだろうけど、今は全部放り出せ。
こんな時にいきなり言われても困るかも知れないが、お前は俺にとって大事な存在になってしまってる。
もう、引き返せない位に。
好きだ。愛してる。
俺だけのアルフリートになってくれ。
お願いだ」
「……っ」
ひくんっ。
喉が大きく鳴った。
「もう、待てない」
華奢なのを気にしていたから、リカルドはアルフリートの衣服を一気に剥ぎ取った。
「……っ、ひ、ひど…っ」
「これくらいしないと、お前はヒラリヒラリと逃げてしまうだろう?」
こめかみに口づけを落とし、自分の上着で包み込む。
「点鼻薬するの忘れたからな、もう我慢の限界なんだ」
「え、……っ、これ…、嘘…!」
熱を凝らせた下腹部に手を導くと、アルフリートが驚いて目をぱちくりさせた。
「辛いんだ。これを鎮めてほしい相手は一人だけ。
……助けてくれるよな?」
「え……うぅ…」
断れない言い方は心得ている。
耳をへにゃんとさせると、アルフリートはコクリと頷いた。
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