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第1話
知り合ったのは今年、同じクラスになってから。それまでは顔見知りなくらいで言葉も交わしたこともなかった。そして付き合い出したのはついこの間。学校の一番端の校舎のそのまた端にある夕暮れの音楽室で、キスから始まった。
「誕生日近いんだって?」
「ぁ、うん」
何の気無しに聞かれてそう答えた。
「俺ももうすぐだけど、いつ?」
「七月七日」
「七夕?」
「うん七夕。お前は?」
「俺は七月十日」
「へぇ……」
近いな……。
「何の日か知ってる?」
「……いや、知らないけど……」
「ウルトラマンの日」
「またまたぁ……」
「知らない? 七月十日はウルトラマンの初回がやった日なんだってよ?」
「……マジで?」
「マジ」
「ウルトラマン?」
「そう。まあ、同時に納豆の日でもあるんだけどな」
「はははっ……! そんなこと言わなきゃいいのにっ……」
それで一気に距離が縮まった。
何せ彼・岩渕透(いわぶち とおる)は、体がデカくて近寄りがたい感じがしたのでクラスメイトではあっても親しくはなかった。でもそれはイカついとか言う種類のものではなくて、どちらかと言えばスポーツマンタイプで自分とは正反対の匂いがしたからだ。俺はどちらかと言えば文科系って言うか、体動かさない的なひ弱な見かけだ。身長はそんなに低くもないと思っているんだが、やはり岩渕と比べると低く見られてしまう。体型だって筋肉質な奴とガリガリ系の俺じゃ隣に並びたくないなってほど違う。だけどその笑い顔がやけに人懐っこくて好きだと思った。
距離が縮まったと思った矢先に、その日の内にキスをした。って言うか、された。
「んっ……ん…」
「…………」
最初は「ちょっとした好奇心」で、次は「ぁ、これ深みに嵌まるヤツだな」ってすぐに分かった。だけど脈絡もなく始まった行為は突拍子もなく終わり、ついでに「ごめんっ」って言葉付きだった。
「なんで謝るんだよっ」
「突然だったから」
「したいと思ったんじゃないのかよっ」
「そう思ったからした。だけど聞いてなかったから謝る。ごめん」
「してから言うのって、随分狡いと思うけど」
「うん」
「…………じゃあさ、聞くことある」
「なんだ?」
「お前、いつもこんなことしてるのか?」
聞くとビックリしたように目を開いて、それからだんだん細めていく。俺はそれを見上げるような格好で見つめていたんだけど、窓から差し込む夕日と生ぬるい風が交ざり合ってキュンってなった。
「……」
顔が近づいてきて突拍子もなく唇が重なると抱き締められながら深いキスをされる。そんなこと初めてでどうしていいのかが分からずに、さそれるがままになってた俺だけど、これは「本物」か「違うヤツか」ってのはすぐに分かった。
「良かった?」
「何が?」
「キス」
「……分かるかよっ。突然過ぎて全然分かんないよっ!」
「だったらもう一回。今度はもうちょっと踏み込んだヤツ、していい?」
「ぇ……。踏み込んだって……?」
「しなきゃ分かんない。言葉で言うと薄っぺらいし」
奴の目の奥は笑ってなかった。そして俺の喉もカラカラだった。
引き寄せられて床に倒れ込むと体中を弄られながらそこいらじゅうにキスをされた。
「ぇ…あっ……んんっ………」
「俺、お前好きだよ? ずっと見てた」
「え……?」
そんなこと少しも感じなかった。首筋に唇を付けながらそんなことを言われた。見られていた自覚なんて全然なくて、首筋に触る唇から出た言葉にエロさしか感じない。
「あっ…あ……あのさっ……!」
「なに?」
「俺、なに? お前にとってのなに?」
「性のはけ口」
「はっ?!」
「この体」
「ガリガリですけどっ?!」
「いいんだよっ。別に」
「よくないだろうっ!」
「俺がいいって言ってんだからいいだろう」
「第一俺、男ですからっ!」
「別にいいじゃん」
「はっ? 何が?! 俺、果たしてどっちよっ! これ! こんなのっ……」
「出せればいいじゃん。絶対お前にも損はさせないっ」
「んんんっ…………」
凄まれて言い返せなくなる。
「損はさせないっ」って……。信じていいのかな……なんて一瞬でも思ってしまったのが運の尽き。とりあえず掃除はしてありますよってだけの床の上で裸にされて体中触られながら舐められたり吸われたり噛まれたり。
「なっ…なぁ、ちょっと……」
「……」
「俺だけ裸って狡いっ……」
「触ってるだけだからいいだろ? 挿れてないし」
「はっ…ぁ…ぁぁっ………んっ………! 痛っ…ぅ……!」
そんなこんなで奴が下半身だけ脱ぎ去ると、お互いのモノをしごきあう。
「あっ…ぁ…ぁぁっ……」
「なっ……。違うだろ……? 自分じゃない奴にされるとっ……」
「んっ…んんっ……ん………」
しごかれながら乳首を吸われてモノのビクビクが大きくなる。奴のモノを触る手の力が抜けてしまったって言うのに、奴は俺のモノを力強くしごいてくるから我慢出来なくて手の中に射精してしまった。
「あああっ……んっ……!!」
ドクドクドクッと勢いよく奴の手の中に精液を放つ。その間も奴は俺の乳首を味わっていて、モノの割れ目を執拗に摩って楽しんでいた。俺はと言えば、ほとんど放心状態で気持ち良さに酔っていたと言ってもいい。だからそれをされるまでは分からなかった。
「ぇ…………?」
「やっぱ我慢出来ない。ごめんっ」
「あっ! やっ…めろっ……! んんんっ……! んっ! んっ!」
ヌルヌルとした自分の精液が奴の手から溢れて尻まできているんだろうと思っていた。そもそもそれが間違いで、奴はしっかりと俺の尻の穴を探り当ててたんだ。両方の脚を持ち上げられて勃起したモノをソコにあてられる。そしてそれを理解したと同時に中にグングン入って来られて俺はヒクつくしかなかった。
「力を抜けっ。すべてを受け入れろ」
「あああんっ……! んっ…んっ…んっ………!」
ズブズブと奥の奥まで奴のモノが入ってくるのが嫌でも分かる。俺は必死になって奴に抱き着いていた。シャツが敗れるんじゃないかってくらい必死にしがみついてたと思う。そんな俺に奴は容赦なくモノを突き入れてきた。
「あああ……いいっ……」
「くっ…ぅぅっ………」
「やっぱ思ってた通りだ……」
「ぁぁぁっ………」
最奥まで入れられて、しばらくじっとしていた奴が俺の中でピクピクと動く。それを感じていると、それだけじゃ済まなくなった奴が俺の両足を抱えて腰を動かし始めた。
「やっ…ぁ……! ぁ…ぁぁっ……!」
「生身の俺を受け止めてくれよ。浮気しない。お前だけの俺になるからっ」
「あっ…あっ…ああっ……!」
奥まで入れて抜く寸前まで引き抜いてからまた最奥まで突っ込んでくる。クチュクチュブチュブチュと言う卑猥な音にすっかり翻弄されてしまった俺は、実は入れられたところでは快感を感じていて「もっと」と思っているのに気づく。初めてだから最初は痛かった。だけど何度も繰り返されるとソコは麻痺してヌルヌルとした感触だけが体中を覆った。
「ぁっ…ぁっ…ぁっ…………」
「その顔は気持ちいいんだろ? 目が虚ろだ」
「ふ……ぅんっ…………。ん………」
「俺のモノ。中に出して欲しいだろ?」
「ん……んんっ………ん…………」
意識が朦朧としていた。激しい摩擦と快感と戸惑いと……。色んなものが交ざり合っていて、それがいっしょくたになると気持ち良さがMAXになる。ブルブルと身が震えて相手を食ってしまいそうになる。
こんな感覚は初めてだっ………。これって……。こんなのって…………。
何にも例えようがなかった。尻に出し入れされて善がる自分がいるってのにも驚きだし、相手がろくに知りもしないただのクラスメイトだったのにも驚きだ。ただ、言えるのは俺も奴が嫌いじゃないってこと。
何度も出し入れされて突き上げられて乳首をギュギュッと摘ままれて体が跳びはねる。奴を入れたところが窄まって相手が顔をしかめる。俺は苦しいながらもその顔を見るのが好きだと思った。
「はっ…は……ははっ……ぁ………」
「もぅ…出るっ…ぅぅっ……!」
「ぅぅぅ………」
体の中に勢いよく奴の精液がなだれ込んでくるのが分かる。しがみつくように抱き着いて脚を絡ませそれを受け入れる。大量に、溢れるほどに受け入れて、ようやく奴が尻から出ていく。
「悪いっ」
「…………」
「今日は、ここまでするつもりはなかったんだが……」
「犯っておいて、それはない」
「本当にな」
「俺の体はボロボロだ。落とし前つけろ」
「どう…すればいい」
「付き合え。俺とちゃんと付き合うって言え」
「そ…れは、もちろん。でなきゃ、こんなこと……するかよっ」
「俺の、どこが好きなんだよ」
「雰囲気?」
「はっ? 何だ、それ……」
「何て言うかな……。何にも属してないって言うか……覇気がないって言うか……」
「それは随分意味が違うと思うけど」
「つまり汚れてないんだよっ。まだ何にも、誰にも」
「……そういうの、つまんないだろ?」
「いや。俺を受け入れてもらうには、十分だ」
「…………」
「好きだっ」
「分かった」
「好きだっ」
「分かった」
「誰にも渡したくないっ」
「分かった。分かったから、俺をどうにかしろ」
「……どうしたらいい」
「とりあえず尻がヤバい」
「ぁ」
俺の尻からは奴が放ったモノが垂れてきている。出来れば便所で全部吐き出したいくらいだ。そんな状況を見た奴は俺の尻に自分の下着を押し当てると「ごめんっ」と口にした。
「便所行きたい」
「そうだな」
三階の一番端にある音楽教室は、ちょうど隣にトイレがあった。奴は裸の俺を抱き抱えるとトイレまで走った。そして便器に座らせると、目の前に陣取ったのだった。
「出てけよ」
「見る」
「は?」
「俺の精液が放たれるのを見るっ」
「…………」
そう言われると強く言い返せなかった。俺は俺で、早く中のモノを出したい衝動に駆られていたので、そのまま奴を無視して中のモノをヒリ出す。
「ぅぅぅ……」
ゴクンッと生唾を飲み込む音がして、奴を見るとモノをしごいていた。
えっ……?
何で? と言う表情で見つめる俺をよそ目に、奴はまたモノを堅く大きくして俺を便器から立たせると、今度は後ろを向かせて尻に突っ込んできたんだ。
「ちょっ…何?! もう終わったんじゃ」
「再戦っ」
「えっ?! あっ…うううっ……!」
中身がなくなったところで再度注入、みたいな勢いで後ろから挿入されてグイグイモノをしごかれて、乳首を摘ままれる。ビクビクッと身を震わせるしかない俺は片脚を大きく上げられて、より深くにモノを突っ込まれた。
「あああっ…んっ! んっ! んっ! んっ!」
「ケツの穴、良好な」
「ばっ……かっ!」
「いいよ。お前のケツっ……! 今度はちゃんと舐めるからっ……。今日はこれで勘弁な」
「あっ! んっ! んっ! んんっ……!!」
終わった時には下校のメロディーが流れてて、俺は奴の精液を体に収めたまま下校するしかなかった。キュッと尻の穴を窄めて、一歩一歩慎重に歩かなければ流れ出てしまう気がしてならない。でも奴はすこぶる上機嫌で俺の肩を抱いて歩いていた。それを許すのはカバンを持ってもらっているせいだ。
こいつめっ……!
中出しされて善がってしがみついた俺としては、甚だ恥ずかしい限りなんだが快楽には勝てないってのを知った。
「新のケツ。毎日掘りたい」
「…………そういうことをサラリと言うな」
「でも気持ち良かったろ?」
「…………」
「違う」とも言えず、「うん」とも言えず、ただ駅までの道をふたりして歩く。
「ケツの穴が窄まない内に何回も入れたい。それが俺の望みかな」
「馬鹿野郎だな」
「でもせっかくこんな仲になったんだし、遠慮は無用だろ?」
「ふぅ…………」
それはそうだが、身が持つかなとちょっと心配になったりする。だけど奴がこんな人間だったとは思ってもみなかったから先がちょっと楽しったりするのも確かで……。
「次はさ、中出ししたら尻を舐めて自分のモノを舐め取るってのはどう?」
「ぇ……」
「俺、今日頑張った。お前の言いなりになった。だから次は俺の言いなりになれよ。でなきゃ次はない」
「…………分かった。次は俺がお前の言いなりになる。だからまたしよう。気持ちいいこと」
「…………うん」
いいとか悪いとか、そんなことは置いておいて。俺は奴のアプローチに乗った。そして奴も俺の提案に乗った。そこからが始まりで、そこからは持続第一だ。
俺たちの歪な関係はこうして始まった。終わりが近いかどうかは、まだ始まったばかりだから分かりっこない。将来がどうだとか、結果がどうだとか、そういう詳しいことは分からないけど始まったことに変わりはない。決めるのは俺であり奴である。これは明確な事実だ。そして俺が覚醒したのも事実だったりする。
タイトル「覚醒」 20180501
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