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その日は急いで仕事を終わらせた ………………この目で見てやろうじゃないか! 両親には朝のうちにラインで断った <ごめん。急用ができた。今日は行けない> ついでに近くでヘアメイクの仕事をしてる友人にもラインした <俺の事、別人にしてくれ。 今日の夜7時頃、空いてる?> 後をつけるなんて恥ずかしい真似 出来れば環に気づかれたくない………… 楽しい事好きな友人は心よく引き受けてくれた 会社を出て友人のヘアサロンで待ち合わせ 「よー!碧。久しぶり」 「リキ!久しぶり!面倒な事、頼んでごめん!」 「楽しそうだしいいよ。オフで良かったな。 スタッフルームで準備するから、こっち」 「時間あまりないんだ」 「分かってるって!30分で仕上げてやる」 スタッフルームには明るいアッシュブラウンのウィッグが置いてあった 「まずはコンタクトね。碧、やった事は?」 「ない」 「じゃ、軽く下向いて」 「わっ!怖い怖い」 「じっとしてなさい」 続いてウィッグ 少しくせっ毛の柔らかい髪質 ドライヤーと、ヘアスプレーやムースを使って、 あっという間に、スタイリングしていく 「仕上げは、洋服。お前が絶対に選ばない色」 淡いパステルブルーのシャツ 「うん。完璧」 リキは自信たっぷりに言った 鏡の前には、別人の俺がいた 本当に別人……… 焦げ茶の瞳 明るいアッシュブラウンの髪に、 ホストみたいな髪型 水色のシャツなんて着たことない 「………うわ……チャラ…………」 「別人になりたかったんだろ? 髪色、目の色、服装が違うだけで全然分からなくなる」 革のブレス、シルバーのネックレス、ゴツメの指輪を4つも付けられた チャラさ全開である 「碧。パッと見じゃ絶対に気付かれない。 ただ、キョロキョロするなよ。 気になってじっと見られたらバレるぞ」 「分かった。リキ、ありがとう。今度、奢る」 「詳しく、経緯と結果を報告しろよ!」 「おぅ!」 今から決戦 そんな気分でタクシーに乗り込んだ

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