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、
家に戻ると、俺はすぐにバスタオルと着替えを取りに行った
碧のスーツを脱がし、ワイシャツと下着だけにする
バスタオルで髪を拭いた
「なんで泣いてたの?」
「泣いてない」
「こんなに赤い目して……」
優しく頬を撫でると、碧はまた、ウルッとしてしまった
俺が冷たくしたから寂しくなったとか、そんな感じだろうか
「よしよし」
考えなきゃいけない
でも、今は碧といたい……
「環」
「……何?」
碧の決意を込めた声に緊張が走る
「俺、雪村とやってない」
「お前、こんだけ、キスマーク付けられといて、何を……」
…………やってない?
どういう事?
「雪村、すげー酔っ払っててキスだけされた。
首に跡、付けられたけど、腕に噛み付いて逃げたから他にはされてない。
しかも、雪村……記憶ないみたい。
でも、告白の返事だし、人けのない場所……と思って家まで着いてったのは軽率だったって、反省してる……」
驚いた…………
「お前、マジで言ってんの?」
「本当にやってない」
なんだ…………
…………なんだ
まだ、俺のものって事……?
「なんだよ………」
気が抜けてソファに座った
「碧、座れ」
「俺……濡れてるよ」
「いいから」
碧をじっと見つめる
怖くて聞けなかった事を聞いてみた
「お前……雪村が好きなんじゃないの?」
碧は心底、驚いた顔をした
「は?なんで!?
そりゃ、こんな事になる前は、同期で一番仲よかったし、良い奴だけど……」
マジかよ……
「…………俺と、どっちが好き?」
「なっ……」
思い切って聞いてみる
「さっき渡したUSB、家のパソコンのデータ。
会社と実家のデータはそのまま。
意味分かるな?
碧。どっちがいいか、言え」
逃げ道を奪い、碧を追い詰めた
聞きたい……
聞かせて。碧
「そ、そんな」
もし、俺って言ってくれたら、ちゃんと信じる
「あと、勝手に跡付けられやがって、謝れ。
できるだけ丁寧に!」
今度こそ大事にするから……
俺を選んで
「濡れたワイシャツってエロいな」
今は恋愛感情じゃなくてもいいから……
「ちゃんと言えたらご褒美やるよ」
いつもの軽口みたいに、なんでもないように普通に話した
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