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第1話
「っ…ティア…恥ずかしい。」
俺は、今日会ったばかりのパートナーに羞恥心を隠せるはずもなく…。
整った顔立ちに優しい微笑みを浮かべる柔らかな銀髪の持ち主の青年と薄暗い寝室の中。
俺は、彼の胡座をかいた状態の膝の上に向かい合わせに抱きかかえられて、ジッと下から顔を見つめられている。
身体は彼の両腕にすっぽり収まって体格の差を嫌という程思い知らされる……。
こんな体勢は…やっぱりちょっと恥ずかしいよ…。
「虹は、キスも初めて?」
豊かな銀髪の青年ーーティアの透き通るけど深いマゼンタ色の双眼から目が反らせず…行き場の失った羞恥は俺の顔を赤く染めるばかり…。
「そっか…じゃあ今日じゃなくてもいいよ?時間はたっぷりあるからね?」
何も言わない俺にさっきの質問の答えは肯定と取られたようだけど…俺だって…もう15歳だし…
キスくらいは経験ある!
慌てて否定しようと、身じろいだ瞬間…
体勢を崩して、後ろに倒れ掛かったところ、ティアが俺の背中を支えてくれた。
反動で少し前屈みになった俺の鼻先が、ティアの筋が通った綺麗な高い鼻にぶつかる。
「わっ!」
お互いの顔が急接近して、慌てる俺。
「大丈夫?…鼻…赤くなってる…。」
そう言って俺の鼻先にチュってキスをくれた。
俺は動揺で無言になる…。
一拍の沈黙の後、ティアの目が一瞬照度を増した気がしたけど…何だったのかな…?
疑問を消化する間も無く、ティアが俺の唇に…唇を重ねて来た…。
触れるだけの優しいキス。
その時今まで気付かなかったティアの匂い……。
甘いんだけど少し清々しい いい匂い……。
こんな感覚…。
俺は…まだ知らなかったんだ…。
パートナーに…なるっていう事。
これからの事を……何も。
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