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第1話

陽Side 霧がかかっていく視界の中、単純に しまったなぁ…て、ただそう思った。 いつもより1本早い電車は、運悪く通勤時間と重なり、車内は酷い混雑で体の向きを変えるのも困難だ。 いつも通う大学へは自宅から電車で1本。 乗り換え無し。 こうして混雑する電車へ乗り込む事が怖くて、毎日必ず1、2本遅らせていたのに。 今日に限って、どうしても落とせない講義が朝一から入っていた。 その講義に間に合わせる為には、この電車に乗らなければ仕方無かった。 俺はもう一度、小さく息を吐いた。 体が新鮮な空気を欲しているけど、吸い込まれるのは人、人、人の臭いばかり。 気が滅入りそうな電車の中。 不意に脳裏に浮かんだのは、ぶっきらぼうだけど優しい兄の顔と、いつも優しい笑顔を向けてくれるその幼馴染の顔。 2人に頼めば良かったかもなんて、身勝手な考えを、頭を左右に振って追い出す。 いい加減、2人から自立しないと…と意気込んだのは、今し方の筈なのに、早々に2人に迷惑をかける事になるとは。

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