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第3話 会社の後輩1
(なごみ語り)
朝出社すると、机にメモが貼ってあった。
『朝イチで大野さんに連絡してください』
僕は今年で25才になる。入社三年目だ。
大野君は1つ後輩だ。
彼は事務処理能力が全くない上に、パソコンも全くできないに等しい。
僕は席について大野君の内線をプッシュすると、2コールで出た。
「おはよう。君に電話しろってメモが貼ってあったけど」
「和水さん、おはようございます。電話ありがとうございます」
僕は資材を発注したり、管理したりする部署に在籍をしている。
主な仕事はほぼパソコンと電話で成り立つ。
一日中デスクワークだ。
「あの……俺の資材の申請がいつまでたっても通らなくて、何故か分かりますか?」
そんなの、承認する上司に聞けばいいのに 何故僕へに聞いてくるのか。
立ち上がったパソコンから、システムを起動させた。こんな時に限ってさくさくと画面が進んでいき、間もなく大野君の申請に辿り着く。一目瞭然だった。
「これ、添付書類が足りてない。取引先の情報が添付されてないよ。それだけ……だと思うけど」
「あぁ、だからか。ありがとうございます。午前中に資材を発注しないとクレームになりそうで冷や冷やだったんです。助かりました」
大野君はお礼を言って電話を切った。
これで将来有望な優秀営業マンなんだから、人間は一つの面だけではないと思う。
取引先から見ると、人懐こくて笑顔が可愛い大野君なのだろう。責任を持って、しっかりと仕事をするのも彼の魅力なのだろうか、確かに人間性は悪く無いと思う。
それから、沢山のEメールをチェックして1日の仕事が始まる。
大野君のことはすっかり頭の隅へ行ってしまったようだ。僕は目の前の膨大な情報量に集中した。
夕方、内線が鳴った。
ディスプレイに出た番号に見覚えがある。朝もここに電話した気がするのは気の所為だろうか、頭の片隅から彼の存在が戻ってきたようだった。
「なごみさーん、助けてください」
開口一番、泣きそうな大野君の声が聞こえてきた。
この時間の彼からの電話はろくなことがない。たぶん……頼られて助けて、残業決定だな。今日中に帰れるかどうかも怪しい。だって、自分の仕事も定時に終わりそうにないのだから。
「パソコンが壊れました。うんともすんとも言いません。画面が青いです」
「えええっ……………分かった。今から行くよ。待ってて」
あぁぁ、何故僕に言うのか。
僕は大野君の部署へ向かうべく席を立った。
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