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第2話
「夏海ちゃん、ありがとね。また機会があったらよろしく」
早朝、午前四時頃のラブホテル前。
昨日の夜から一緒にいた女の子と、最後の挨拶を交わす。機会があったら、また、そんな言葉は決まり文句であり偽りの言葉だ。一度抱いた女は二度と抱かない。変に執着されても困るし、何よりマンネリ化すると面倒だ。女の体は、当然だが一人一人違う。毎回変えていれば、毎回違う快感を楽しめるということだ。一つのものに囚われるなんて、つまんないだろ?
「うんっ。またね、祐大君!」
あーあー、健気。頬を赤く染めてまたね、なんて一生ない約束を取り付けちゃってさ。本当に可哀想。気にもとめないけど。
4月23日。
新しい生活がスタートする春は、色々ストレスを貯めている人たちも多いだろう。そんな中で少し疲れ気味の女の子達に声をかければ、一発で引っかかる。これほど簡単なことは無いよな。
つくづく自分はクズ人間だと思うが、こんな性格になってしまったのだから今更直そうと思っても直せるものでは無い。取り敢えず今は、やりたいことを全力でやるべきだ。気がつけば二十代なんて終わってる。今は残りの四年を楽しむためだけに生きていよう。
「いらっしゃいませー」
俺の勤め先は駅前のレストラン。学生時代にバイトとして雇っていてもらった場所で、繰り上がるように正社員になった。
ここの料理はとても美味く、昼休憩などでたまに食べさせてもらえるのだが、それがすごい楽しみだ。
「祐大君、これ出来たよ」
「あっ、はーい」
今声をかけてきたのが厨房で勤務する、松浦遥都さん。俺の二つ上で二十八歳。大人な雰囲気がカッコよく、男女共にモテるらしい。ちなみに松浦さんは、バイだと噂がたっている。
この人の作る料理は本当に一流で、この人のおかげでこの店が成り立っていると言っても過言ではない。
「お待たせ致しました。明太子クリームパスタです」
こんなクズ人間の俺でも、お客様が美味しそうに食べている姿を見るのは嫌いではない。それでなければこんな一般的な飲食店で働くはずがない。昔はもっと大手企業を志望していたからな。
「あ、祐大君、今夜暇?」
「え、あ、はい」
中に戻ると松浦さんが、いつもの笑顔で話しかけてきた。今日は誰とも予定を入れていないから、暇といえば暇だ。
「じゃあ、どっか食べに行かない?」
「あー、いいですね。行きましょう」
こう来れば、断る理由もないだろう。
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