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 妖怪の類がこの世の中に実在するとは、正直驚きだった。  それでも自分の記憶にないだけで、実際は共存する世界もあるのかもしれない。  そう考えると恐怖よりも、自分を納得させることが出来た。  自分がどこまで記憶をなくしているのかわからない以上は、今起きていることを理解していくことが先決なように思える。  それに行き場もなければ、頼れるのは目の前の青年だけだ。妖怪だろうと何だろうと、手を伸ばしてくれるのであれば縋る以外に方法はないように思えた。 「分かりました。なんとお呼びすればいいですか?」  覚悟を決めると、青年に向けて問いかける。 「えっ?」  今度は青年が拍子抜けしていて、口を薄っすらと開けている。 「話聞いてた? 俺は妖怪だと言ったんだ」 「聞いてましたよ。僕の記憶にないだけで、記憶取り戻したら妖怪は当たり前に存在しているかもしれないじゃないですか。それに、貴方は僕を助けてくれました。悪い妖怪じゃない事は明白です」  一気に喋ってから姿勢を正し、青年に向き直る。 「不束者《ふつつかもの》ですが、よろしくお願いします」  世話になる以上は、礼儀は必要不可欠だ。ゆっくりと青年に向かって、頭を下げていく。  青年が息を飲み、しばらくすると呆れているような溜息を吐き出すのが聞こえた。

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