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(おまけ)亮真くんのいうとおり!
再会のその後、ひと声掛ける間も無く他家のお迎えが立て込み、何の話もできないまま亮真を連れて保育園を出た。放心状態からなんとか立て直しハンドルを握る。後部座席のチャイルドシートに座る亮真から、いつものようにその日の出来事を聞いた。
「パパ、保育園でね、おともだちが作ってた積み木のおうち、ぼくのバッグが当たってこわしちゃったの」
「なんだ?喧嘩か?」
「けんかしないよ、わるいのはぼくだもん、謝らなきゃ。ゴメンナサイするのってホントたいへんなんだね。なかなかゆるしてくれなくてさ。
でも、こわしたのはぼくだからね、たくさんたくさん謝ったの。
がんばってゴメンナサイするとお腹減るんだねー。」
「許してくれた? 」
元通りには戻せないからすごい怒っただろ?
「ちゃんとイイヨしてくれたよ。
がまんして、すっごいがんばってイイヨって言ってくれたのかもしれないよ。あの子もきっとお腹減ったよねー。
それでね、"こんどはいっしょに、こわれないおうちを作ろうね"ってやくそくしたんだ。ひとりで作るより、きっとたのしい、いいおうちができると思わない?」
………。
「……パパ? なんか変なお顔してる。パパもお腹減ったの?」
………一緒に、壊れない楽しいおうち、か。
「パパ?」
「亮真。パパはね、まだちゃんと頑張ってないから、まだまだお腹減ってないんだ……」
「ふうん。だからおなか、引っ込まないんだね」
放っとけ、それはビール腹。
今日は本当に驚いた。
まさかまたアイツに会えるなんて、思ってもいなかった。5年前、なにもかもぶん投げて稜馬の元から出て行ったまま、連絡すらしなかったのだから。
ーーーきちんと話をしないとな。稜馬は許してくれるだろうか。
酷いことをしたのは俺だ。稜馬に申し訳が立たない。
帰り際、おたより帳に稜馬が貼った付箋に、携帯番号が走り書きされているのが唯一の救いだ。
ちゃんと向き合って本気で謝って、あいつが望んでくれるのならば、今度は一緒に壊れない場所を作ろう。頑張って謝って、腹ペコになったら、亮真と3人でごはんを食べよう。
あったかいごはんを一緒に食べよう。
感謝してもしきれない愛すべき天使には、デザートも付けなきゃな。
ああ、まったく、亮真には敵わない。
<りょうまくんのいうとおり! おしまい>
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