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「梓乃~! 今日バイトは?」  本日の講義が全て終わり、友人の彰人が話しかけてくる。彰人の後ろで俺の返事を待っている面子から、いつもの「カラオケいこうぜ~!」だと察して、俺は正直に「今日は紗千の誕生日だから」と断った。そうすれば、彰人の後ろにいた女友達の瑠璃が慌てたように体を乗り出してくる。 「梓乃、ケーキ買うの⁉ この時間だと結構売り切れてるかもよ⁉」 「えっ、まじ⁉」  駅の近くのデパートで買う気満々でいた俺は、ハ、とデパートの閉店時間を思い出す。十九時三十分。現在時刻――十七時五十五分。今から駅までいってデパートにいったところで、ケーキはきっとほとんど売り切れているだろう。やばい、と塞ぎこんだ俺に、瑠璃の隣にいた彩優が肩をたたいて笑う。 「私、九時まで営業しているケーキ屋知ってるよ!」 「え! どこ⁉」 「学院前駅おりたところの。梓乃、たしか帰りその駅通るよね? 『ブランシュネージュ』っていう小さいケーキ屋があるんだけど……そこならもしかしたらホールケーキとか、今の時間でも売っているかもよ」 「……彩優~……ありがとう~!」  俺は彩優の手を掴んでぶんぶんと大げさなくらいに振る。よかった、紗千のがっかりした顔を見ないですむ――その安心感にほっと胸を撫で下ろす。それでも急がなければいけないことには変わりない。俺は皆に別れを告げ、早足で教室から飛び出した。

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