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 ブランシュネージュを出て、瑠璃と別れて、家に着いたのは日が落ちた頃だった。今日、瑠璃は彼氏と智駿さんのケーキを食べるのかと思うと随分と羨ましい。今日はちょっとだけ智駿さんと会話して更に智駿さんのことが恋しくなった。ああして間接的(というのだろうか)に甘いことをされるのもいいけれど、やっぱり俺は直接されて、どろどろにされたい。  あともうちょっと、もうちょっとで日曜日。智駿さんの家に行ける日になるんだよなー、そんなことを思ってぼんやりとリビングをうろうろとしていたときだ。 「……!」 テレビから、聴いたことのある曲が流れてきた。クラシック、なのだろうか、色んな所で耳にするピアノ曲。あんまり興味はないけれど、母さんがみているようだからチャンネルを変えることもできず、俺はスマホをいじりながらソファに座る。 「……あれ」 「どうしたの?」  不意に、テレビに視線を移して俺は既視感を覚えた。画面の端に、この曲のタイトルがでている。そして、そこに書かれていたのが、 「……ジュトゥヴ」 「……好きなの? この曲」 「……いや、別に」  「ジュトゥヴ」。智駿さんの「俺をイメージしたケーキ」の名前になっていた言葉だ。どこかの言葉なのだろうか。てっきり都会の人たちくらいしか知っていないようなオシャレ用語だと思っていたけれど、たぶん違う。どういう意味なんだろうと持っていたスマホで調べて、そして俺は思わずスマホを投げ飛ばしそうになった。 「あ、……ああ、もう~!」 「梓乃?」  突然バタバタとしだした俺を、母さんは訝しげに見ていた。俺はもう、逃げ出すようにして立ち上がり、自分の部屋に向かって駆け出していた。

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