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「……」
連れてこられたところをみて、俺はあんぐりとしてしまった。そこは、アダルトショップ。前に白柳さんに連れ込まれたところだ。なんでみんなそろいもそろってここにくるんだろう。
「バイブとかさ、使ったり」
「バイブはもらった」
「もらったァ!? なに、それでオナれ的な? で、梓乃ちゃんやっちゃうの?」
「うん」
「……調教済みかよぉ……」
彰人は参ったって顔をしながらも店に入っていく。俺の手を掴みながら店内を物色するように歩いていって、「すげー」なんてぼやいてた。
「バイブあるならあれしよ。練習」
「練習?」
「フェラの練習とかさ、あと締める練習」
「締める?」
「やっぱ締まりのいいやつって気持ちいいじゃん。気持ちいいと理性もぶっ飛んじゃうって。名器になろうね、梓乃ちゃん」
「……なるほど」
なるほどじゃねーよ、ってちょっとずつ酔いが醒めてきた自分が突っ込んでいる。ただこの酔った馬鹿な俺もその裏の冷静な俺も、名器になる訓練はしておこうということで意見は一致していた。
「はあ、梓乃ちゃんほんと女の子になっちゃってさ」
「女じゃないよー」
「そんな女の子な梓乃ちゃんにオススメするのは、」
馬鹿な会話をしながらぐいぐいと俺を引っ張っていた彰人がぴたりと動きを止める。そして、ぱっと手で指し示したのは、
「女装プレイ、どうでしょう!」
「……はい?」
ぺらぺらスケスケなランジェリーのコーナー。それをみた俺は完全に酔いが醒めて店から飛び出そうと彰人に背を向けたけれど、ガシッと手首を掴まれる。
「前、男の娘エロ動画みたんだけど、思った以上に興奮するからさ! 名器になって女装もすれば智駿サンの理性なんてイチコロよ!」
「なんつーもんみてんだよ! 俺は女装の似合うような可愛い系の顔はしてないから!」
「似合う似合わないじゃない、男が女の格好してハメられてるのがイイんだよ!」
「いつのまにおまえの性癖歪んだんだよ!」
俺がぶんぶんと顔を振っても彰人は構わずその女物の服を取っていく。黒いスケスケの「ベビードール」と書いてあるキャミソールみたいな服と、それと同じデザインのパンツ。そんなもん恥ずかしくて着れないから、って俺はあからさまに顔をしかめてみせたのに、彰人はそのままそれらをレジまで持っていってしまった。
遠くから俺はそんな彰人の背中を見つめて、苦笑いをすることしかできない。そういえばあのレジの店員、前と同じ人だなあ……なんて考えているうちに、彰人は袋にいれられたエロ下着を持ってくる。
「はい、梓乃ちゃん。プレゼントね!」
「い、いやいやいやいやいらないし! おまえそんなことして何が楽しいんだよ」
「え? 女装プレイしてる梓乃ちゃん想像して抜く」
「……着ないし!」
ぐいぐいと押し付けられたから仕方なく受け取ったものの、たぶんこれを俺は使わない。どうやって智駿さんに「女装プレイしましょう」って言いだせというんだ。にやにやとしている彰人が肩を抱いてきたから俺はそれを引きずるようにして、店を出て行った。
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