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「おかえり、ラズ」
レッドフォード邸についたのは、夜10時をまわったころだろうか。少し心配そうな顔をして自分を出迎えてくれたハルをみた瞬間、ラズワードのなかに一気に罪悪感が押し寄せる。服に残り香がついていないだろうか……そんなことを考え、後ろめたい気持ちを引きずりながら、頼まれていた物を押し付けるようにハルに渡した。
「……あの、お風呂はいったら……俺、今日は自分の部屋で寝ますね。……ちょっと流行病にかかっちゃったみたいで……魔術で治すのも難しいんです。うつしてしまったら悪いし」
「え、大丈夫? 明日医者よぼうか?」
「あ、いえ……大丈夫です、酷いものではないのですぐに治ります。すみません、ご心配おかけして」
「大丈夫ならいいけど……。ゆっくり休んでね、おやすみ、ラズ」
「……おやすみなさい」
ハルから視線を逸らさずに話すことが、苦痛だった。自分をいたわる言葉をかけられればかけられるほど、ギリギリと胸が傷んだ。
ハルに背を向けた瞬間にこぼれた涙は、自分の背に突き刺さる心配そうな彼の視線がそらされるのを感じるまで――拭えなかった。
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