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***  施設へ帰る道程で、ラズワードはずっとノワールの背を見つめていた。行きも乗ってきた、竜の背に乗って風に吹かれる。どこか悲しそうな顔をみて、焦燥を覚えてしまう。  今回討伐した魔獣は……ノワールと自分、二人がいなければ勝つことができなかった……と、ノワールは言っている。ノワールの力に大きく助けられたラズワードからすれば、ノワールの力が大きいと思っているが、彼にとってはやはり自分はなくてはならない存在だった。  唯一無二の強い力を持つ者。今回のことで、ノワールは完全に自分をそう認識しただろう。そして、強い「運命」を感じたと思う。それなのに……ノワールは「約束は忘れて」と言っている。目の前に、強い者がいるのにそれを諦めようとしている。 「……ノワール様」 「ラズワード」  周りに他の神族もいる。滅多なことは言えないが、声をかけてみれば、ノワールが名を呼んできた。 「運命に従えば、君は不幸になる。運命に逆らえば――君はきっと幸せになる。ラズワードには、選ぶ権利がある」 「……」  なんだ。こちらが言いたいことを、この人はわかっている。どうすればいい――わからなくて、ラズワードの口からでたのは、どうしようもない言葉だった。 「……どっちを選んでも誰かを裏切ることには、変わらない」 「……神様って残酷だ。おまえをいじめたいのかな」  風が鬱陶しい。前髪が、じゃまだ。 「……あなたが、神様でしょう」

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