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――最近のラズワードはおかしい。ハルはそのことについてずっと悩んでいた。時折ぼーっとしていてどこか遠くを見ている。そして、自分にすがりつくように愛を求めてくる。まるで、何か背を向けて逃げているように。見てはいけないものを、見ないようにしているといったふうに。
ラズワードは一体どうしたのだろう。もしも、ラズワードのなかにある迷いが消えた時、彼は自分のもとに居続けてくれるのだろうか――ハルは、それが怖かった。いつか、ラズワードは自分のもとを去って行ってしまうような……そんな気がした。
「……あ、」
ぽつん、と頬に何かがあたる。冷たいそれは……どうやら雨粒のようだった。おそらく土砂降りにはならないだろうが、次第に強くなってくるだろう。
街での用事はもう済ませたため、早い所帰ったほうがいいかもしれない。そう思ってハルは帰路につこうとしたが……
「――あれ、ハルさん」
「……!」
後ろから、声をかけられる。振り向けばそこにいたのは――黒だ。
「お仕事ですか」
「ええ……もう済ませたんですけどね。黒さんも?」
「視察のようなものです」
黒は、いつものように爽やかな装いをしていた。ただ――どことなく、その瞳に影がある。
「……黒さん、疲れているでしょう」
「どうしてです?」
「なんだか表情がすぐれないので」
「ああ……雨が降りそうだからかな」
「雨、お嫌いです?」
「いえ……好きですよ。雨の音が好きです。頭のなかのぐちゃぐちゃとしたものを消してくれるような感じがするでしょう。ただ――雨の降っている日にあまりいい思い出がないもので、気分は鬱屈としてしまうんですが」
黒はハルに近づいてくると、ふっと疲れたように微笑む。妙に色っぽいその表情に、ハルは思わずギクリとしてしまった。雨の匂いの混ざる生ぬるい風が吹いてきて、黒の髪を煽る。ふわりと揺れる黒髪が、その白い肌にぱさぱさとかかっている。
「もし今時間があれば、ちょっとどこかに寄って行きませんか」
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