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今日の生徒会の活動は案外早く終了した。生徒会のメンバーはわりとのんびりとした良い人が多くて、一年が一人だけはいる形になってしまったが上手くやっていけそうだ、と沙良は安心する。
皆が次々と教室から出ていく中、沙良はちらりと波折をみつめた。使った資料を整理して、自分の机の周囲を片付けている。
「あ、あのー……波折先輩」
「ん? 何?」
「途中まで帰り道、一緒ですよね。一緒に帰りませんか」
どきどきしながら、沙良は彼に尋ねてみる。もっと彼と仲良くなりたい、そう思った。自分が目標とすべき存在で、完璧な彼をみているとどうしても嫉妬はしてしまうが、でもやっぱり憧れる。彼のことをもっと知ってみたいと思うし、もっと話してみたいと思うのだ。
……しかし。
「……え?」
波折は、明らかに困ったような顔をみせた。「なんで?」といった彼の心の声がきこえてくるようなその表情に、「え」と沙良はびっくりしてしまう。拒絶された!? ショックでさっと血の気が引いていくような感じがして、沙良が何も言えないでいると、誰かが後ろから肩を組んできた。
「おう、神藤君! 俺と一緒にかーえろ!」
「……鑓水先輩」
助け舟のような、明るい声。鑓水が一瞬固まった沙良と波折の間に割りこむようにして入ってきたのだ。鑓水はそのままぐいぐいと沙良を引っ張っていって、生徒会室から出て行ってしまう。「じゃーねー波折!」とひらひらと手を振ると、ぴしゃりと扉をしめてしまった。
「あんまり波折にぐいぐいいかねえほうがいいぞ!」
「え?」
生徒会室から離れたところで、鑓水が言う。沙良がわけわからない、という視線をむけると、鑓水が苦笑した。
「あいつ、なんつーの、入っちゃいけないエリアみたいのがあるんだよ。一定以上は仲良くする気ないっぽい。上辺はイイ奴だし、軽い付き合いしていれば笑顔振る舞ってくれるけど、あんまり入り込んでいくと拒否られるよ」
「……なんですかそれ」
「俺も前さ、仲良くしようと思ってめっちゃぐいぐいいったことあんだけど、嫌そうな顔されたからやめたんだわ! まああいつそういうヤツっぽいし、仕方ないかなって思って。だから神藤君も、あいつとはさらっと付き合う程度にしたほうがいいよ。ギスギスしたくないっしょ?」
鑓水の話をきいて、沙良は落胆した。人付き合いが苦手な人もいる……というのは承知だが、好意をもって接してくる人をあんな顔をして跳ね除けることないじゃないか……と思ってしまったのだ。自分に理解がないのかな、と思いつつも、少し残念な気持ちになる。さっき、拒絶の顔をみせられて……かなりのショックを受けてしまったのが、大きい。
「……あんな顔しなくても」
「まあまあまあまあ! 悪いヤツじゃないから! たぶん! うまく距離保って付き合っていればあっちもそんな拒否ってきたりしないからさ!」
――腑に落ちない。
沙良はむっとしながらも、どうにかもう少しだけ波折と距離をつめたい、と思うのだった。
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