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「沙良ちゃん? どったの、ぼーっとしちゃって」
授業が終わると結月が沙良のもとにやってくる。沙良にしては珍しく真っ白な授業のノートをみて、結月は不思議に思ったようだ。ぼんやりとした表情の沙良の前で手を振って、顔を覗きこんでくる。
「い、いや……なんか今日眠くて」
「ああ、あるある、やたら眠い日。ノート貸そっか?」
「お願い~ありがとう」
「あっ、みてみて沙良ちゃん! 会長様!」
「ぶっ」
結月が窓の外を指さした。突然波折の話題がでてきて、沙良は動揺のあまり椅子を転げ落ちてしまいそうになる。なんとか結月の示すところを見てみれば、ジャージ姿の生徒が校庭に集まっていた。次は体育といったところだろう。そのなかには波折もいて、クラスメートと話している。
「……ジャージ……波折先輩」
「イケメンはジャージ着ていてもかっこいいねえ!」
「かっこいい……?」
かっこいい。そう言われて、まじまじと見てみる。少し大きめのジャージをゆったりと着ているが、ぴしっと背筋を伸ばしているからかだらしない印象は受けない。同じジャージを着ているのに、周りの生徒よりも垢抜けている。
……なんていっても、あいつとんでもないド淫乱なんだぜ。と沙良は頭のなかでつぶやいた。ジャージ着たプレイとかしないのかな~、なんて、もはや波折が誰かといやらしいことをひたすらにしている前提の妄想が、沙良のなかで始まってしまう。
***
ハチマキで目隠しをされた半袖ハーパン姿の波折が、体育館倉庫のなかで跳び箱に跨っている。股間を跳び箱に擦りつけるように、ゆらゆらと腰を揺らしていた。
『ん、ん……んー……』
『波折~、シャツめくってごらん。可愛い乳首、みせて』
『ふ、あぁ……はい、みてください、ごしゅじんさまぁ……』
『そうそう、そうしたらシャツを口に咥えてね。ずっと乳首を俺にみせているんだよ。自分で乳首、いじってごらん』
波折は言われた通りに、シャツを口にはむ、と咥える。そして、く、と乳首を主張するようにのけぞると自分でそこをいじりだした。くにくにと指先で、ぷっくりとふくれあがった乳首を揉んでいる。
『あん……ちくび、きもちいいです……』
『ほら、腰ももっと振りなさい。おちんぽちゃんとこすりつけて』
『はい……あっ、……あっ、あっ……』
***
(ああああ……)
「ちょっと? 沙良ちゃん? さーらちゃん?」
急に頭を抱えだした沙良を、結月は心配そうに覗きこんだ。しかし、沙良は「なんでもない」といって何事もなかった風を装う。そりゃあそうだ。あの会長様でろくでもない妄想していましたなんて言えるわけがない。
先ほどからとんでもないことばかり考えている自分が嫌になった。波折とあの動画は関係ないのに勝手に重ねて妄想してしまうから、妙に生々しいものになってしまう。それもこれも、昨日の波折の痴態のせい。でも本人は知らん顔。
「……会長……許さない」
「えっ、なに急に」
自分のことをかき乱すだけかき乱してしまった波折が、沙良は恨めしくて仕方なかった。
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