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放課後、波折は鞄の中にノートなどを詰め込んで、生徒会室にいく準備をしていた。ちょろちょろと、周りの生徒たちが顔を赤らめながら話しかけてくる。教科書のここがよくわからないから教えてやら、空いてる日ないの?やら、男も女もみんな波折にどうにかお近づきになりたいと積極的に話しかけてした。波折はいつものように笑顔を浮かべて、一人一人に対応してゆく。そんな波折の笑顔をみて、みんな揃いも揃って波折に見惚れたようにぽーっと見つめてくる。そうやってしばらく波折が足止めを食らっていたとき。
「波折ーいるー?」
「……慧太」
教室にどかどかと騒々しく鑓水が入ってきた。鑓水も、見た目が不良のようで近寄りがたい印象は持たれているが人気があるようで。鑓水をみた女子たちが遠巻きに騒いでいる。男子生徒も鑓水に気さくに挨拶をしていくものだから、鑓水が入ってきた瞬間に、教室の空気は一変した。
「よっ、ちょっと生徒会始まるまで時間あんじゃん? 暇だから来たわ!」
「ああ、そう」
波折と鑓水が二人で揃うと、わあっとみんなが騒ぎだす。こっそり写真を撮られたりもしていた。
「わー、会長と副会長……ほんとかっこいい……」
「別世界って感じ……!」
鑓水は大袈裟に騒いでいる生徒たちを横目でみながら、いつもの調子で飄々と波折に話しかける。波折はといえば、表情こそはすましているがどこか視線が泳いでいて。鑓水はそんな波折の心境に気付き、ふ、と微笑む。そして、するりと波折の手をとって、耳元で囁く。
「ちょっとトイレいこうぜ」
「……っ」
ぴく、と波折が震える。
妙に怪しい二人の雰囲気にまた、教室中が騒がしくなる。鑓水は煩い外野を気にする様子もなく、波折の手を引いてそのまま教室を出て行ってしまった。
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