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「うわー、遅くなったな」
いつもよりも暗くなるまで仕事をして、ようやく今日の活動は解散となった。沙良は途中で帰宅してしまって、鑓水は波折と一緒に学校をでた。
「今日誰のうちいくか決めてねーや。波折ー、おまえんち行っていい?」
「……うん」
クラスの出し物の準備を終えた生徒がまばらに校舎を出てゆく。そんななか、二人で帰っているとやはり注目の的となってしまっていた。家に行くと言ったときに波折が微かに頬を赤めたものだから、鑓水は手でも繋いでやろうかと思ったが、こうも注目されてはそれはできない。そもそも波折が嬉しそうにしたのはセックスができるという期待からであって、そんな甘い行為は求められていないと知っていたため、鑓水もすぐに諦めがついたのだが。
「つーか、寒い」
「もう秋だし夜も遅いから」
「マジで寒い!」
「ブレザー着てないからじゃないの」
「波折の貸して!」
「ふざけんな」
身を縮こめてかたかたと震える鑓水を波折は無視してスタスタと歩いている。ああ、凍えそうだ……と鑓水は波折に抱きついてやろうかと思ったが、やっぱり人目が気になる。
波折の言うとおり、そろそろ寒くなってくる季節だ。窮屈だからとブレザーを着ないでカーディガンだけでいるのは、さすがに寒い。これからブレザーなしで過ごすのは辛いかな、と思った鑓水は憂鬱げにぼそりと呟く。
「……波折、ちょっとうちに寄っていい? ブレザーとってくる」
「……慧太の家? ああ、いいけど」
波折は鑓水の表情に「あれ?」と眉をひそめた。家に帰るのにそこまで嫌そうな顔をするのか、と。そういえばほとんど家に帰らないと言っていたような気がするな……と思いつつ、言及する気にもならない。波折は黙って鑓水のあとに着いていった。
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