――――― ――― ―― 　自分のことを話した鑓水は、陰鬱な表情を浮かべていた。決して自分が悪いわけではないのに、自分が悪いと思ってしまっている彼。行き場のないストレスが自分よりも上の人間である波折にぶつかってきていたのだった。それを理解した波折は、鑓水をぎゅっと抱き寄せてその頭を撫でてやる。 「……慧太、話してくれてありがと」 「……」 　鑓水が波折に覆いかぶさる。そして、縋りつくように、唇を重ねた。 「ん……」 　波折は鑓水の背に腕を回して、キスに応える。舌が入り込んできたから、こちらも舌を伸ばして絡めてやる。ゆっくりと、熱を溶け合わせるように……静かに、お互いの舌の感触を堪能した。 　いつものキスと少し違うな、と思った。強引に波折を自分のものにしたいという意思を感じない。弱々しくて、それでいて優しい。暗闇の中、ただお互いの存在を確かめ合うようなそんなキスはどこか心地よくて、波折も慣れないそれに不思議な心地を覚えながらも気持ちいいと感じていた。 「あっ……」 　唇を離されて、瞼をあければ、鑓水とばちりと目があった。泣きそうな顔をしている。辛そうな、波折に強烈な何かの想いを抱いているような、そんな瞳に波折は思わず目を奪われた。 「けい、た……」 「……離さない」 「え……」 「おまえのこと、絶対に」 　また、唇を奪われる。――熱い、そう思った。頭のなかがびりびりとして何も考えられない。 「……ッ」 　キスだけでこんなに体が熱くなって、おかしくなってしまいそうになって……そんなの、初めてで。波折も少し、戸惑った。