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***  アーケード商店街を満喫すると、二人は少し離れにある大きな公園にやってきた。この時期になると木々が燃えるように紅く染まり、公園は美しい紅葉に包まれる。透き通った秋空とのコントラストが鮮やかで、この時期になると多くの人々が訪れるのだった。 「綺麗だね」  ベンチに腰掛ける。ぽつぽつといくつかあるベンチにはカップルが座っていて、キスをしたりしていた。みんな自分たちの世界に浸っている。鑓水と波折も周囲の目はあまり気にせずに、手を繋いで座っていた。 「慧太」 「ん?」 「ありがと。俺のこと好きになってくれて」 「なんだよ、それ。ありがとうなんて言われるようなことしてないんだけど」 「うん……でも、すごく幸せ。幸せとかよくわかんないけど、昔よりも毎日が満たされている気がする」  波折の頭が、とん、と鑓水の肩にのる。お、と鑓水は小さく感動した。まばらとはいえ人がいるこの場所で、波折が自分からこういうことをやってくるなんて。「ご主人様」の呪縛に勝ったような気がした。 「慧太……」 「ん?」 「……キスして」  さっと葉風が立つ。秋の匂いが舞い上がった。そっと唇を重ねると、触れた場所から熱がふわっと全身に広がっていって、胸を締め付ける。なぜかたまらなく切なくなって、泣きそうにもなってしまう。鑓水はこんなにも誰かを好きになったことが、誰かに恋をしたことが初めてで、この感覚に戸惑った。きっとどこかで想いがすれ違っているのだろうと瞼を開けて波折のことをみつめれば……波折の瞳が濡れている。なんだ、波折も同じ切なさを感じていたのかと、鑓水は笑った。 「波折……愛してる」  ――愛も恋も、おまえは知らなくていいよ。ただ、幸せだと思ってくれたのなら、俺はそれでいい。

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