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「そっか~、おちんぽが欲しいんだね、波折」
「はいっ……おちんぽください……!」
「よーし、わかったわかった、おちんぽあげる」
「うれしいっ……ごしゅじんさまぁ、おちんぽはやくぶちこんでぇっ……!」
く、と男が笑う。視線をちらりと床に落とし、そして落ちていた手錠の鍵を拾った。波折の手を手錠から解放してやって、がくんと崩れ落ちた波折を抱きかかえる。
「あふっ……」
「よーし、波折におちんぽあげるからなー」
男は波折を抱きかかえたまま、篠崎の転がるベッドまでやってきた。篠崎がわけがわからない、と言った顔をしていれば……男は言う。
「ほら、波折。そこのおちんぽぶちこんであげる」
「えっ……?」
「みえるだろう? おまえの痴態をみてギンギンにかたくなった、おちんぽ。調度良く落ちているからさ、それ波折にぶちこんであげるね」
篠崎も波折も、男の言葉に驚いたようだ。特に波折はぎょっとした顔をして、男を見つめている。
「ご、ごしゅじんさま……? おれ……ごしゅじんさまの、」
「波折ー、俺のためだと思って。そこの汚物を使って俺を愉しませてよ」
「……ごしゅじんさま、たのしいんですか?」
「ああ……死にゆく無様な人間が最後に大好きな人と繋がれる……そんな瞬間、どんな顔をするのかみてみたい。波折、協力してくれるよね?」
何を言っているんだこの男は――篠崎は男を信じられないといった目で見上げた。しかし波折は……男の言葉を聞いて、ぱちくりと瞬いたあと、ふ、と笑ったのだ。
「……わかりました、ごしゅじんさま」
「……なっ、」
え、と篠崎は息を呑む。どう考えても男の言っていることは、おかしい。それなのに波折はあっさりと頷く。そもそも篠崎を殺す体で話を進めているというのに、波折はそれに驚きのひとつも見せていない。……おかしいのは、男だけじゃない。波折もだ。
――この二人は、狂っている。
「篠崎くん、」
「ひっ……」
波折が篠崎のスラックスのファスナーを下ろす。男は後ろから波折の膝を抱え開脚させ、その体勢を保たせてやっている。
「俺ね、篠崎くんのこと……別に嫌いじゃなかったよ。セックスも下手で、俺の好きな人たちから俺を引き離して……それでも、大切な友人であることには変わりなかった。でもね、ごめんね。ご主人様のことを知っちゃったら、殺さなきゃ。君莫迦だからいつか俺達の邪魔になるでしょ?」
波折の指先が、篠崎のペニスに触れる。こんなにも恐ろしい状況だというのに、情けなくも篠崎のそれは勃っていた。男が波折を持ち上げて、秘部にペニスの先をあて……静かに下ろしてゆく。
「あっ……んっ、……悲しいなあ……俺……篠崎くんのこと、殺したくなかったのに……んんっ……」
「なに……なにを、言って……うっ……」
ずぶ、と奥までペニスが入り込む。そうすると波折は満足気にため息を付いた。
「んっ……」
波折が男に支えられながら、腰を振る。うっとりとした目をしながら。
「あっ……はぁっ……」
そんな顔をして腰を振る波折を、篠崎は知らない。一度騎乗位を強要したことはあったが、こんなに気持ちよさそうな顔で腰を振ったりはしなかった。
今、自分は絶体絶命にあるだろう。それでも篠崎は波折の蕩けきった表情に興奮してしまっていた。おかしい、自分もおかしい。この状況はあまりにも狂っていて、頭がイカれそうになる。
「みてごらん、波折……篠崎くん、興奮しているよ」
「あっ……あっ……あぁんっ……」
「さすがだね、波折……みんなみんな、おまえの虜だ。おまえはすべての人を狂わせる」
ぐちゅぐちゅといやらしい音が響く。男の言っていることの意味がわからない。快楽と混乱、頭のなかを異常が満たしてゆく。完全に思考は麻痺して、ただ興奮のままに篠崎は腰を振り出した。自分の上に乗っかる、美しい人。可愛い人。もうわけがわからない。ただただ腰を突き上げて、よがらせて、そのいやらしい姿を見たい。
壊れた思考のなか、動くのは本能だけだった。
「あんっ! あんっ! やぁっ……すごいっ……! はぁっ……きもちいいっ……!」
「冬廣会長……! 冬廣会長!」
突いて、突いて、突いて。無我夢中で腰を振って、そして篠崎は波折のなかに精を放つ。
「んっ……」
篠崎になかに出されるのを感じると、波折はぎゅっと目を閉じてぶるぶると震えた。男はそんな波折をみつめ、ふっと微笑む。
「はい、波折。最期はおまえの手で」
「……?」
男が拳銃にサイレンサーを取り付けると、それを波折に手渡した。波折はしばらく拳銃を眺めていたが、きょとんと男に向き直る。
「これを、どうするんですか?」
「それで篠崎くん、殺して」
「えっ? 俺が? ご主人様が殺すって言ってたじゃないですか」
「波折が殺したほうが面白いでしょ」
波折は「殺せ」と言われて少しばかり驚いたような顔をしていた。しかし……しばらくすると、ふと無表情になってしまう。
「……ごめんね。篠崎くん。君は死ななきゃいけない」
「……えっ、ちょっと……本気で殺すつもりですか……!」
「俺が冗談言うと思う?」
ぐちゅ、とつながったままのそこが音をたてる。はあ、と波折は艶かしい吐息を吐いて、その快楽のことだけを考えているかのように笑う。
――あ、もうだめだ。
篠崎は思った。この波折のいう人物は……おかしい。普通の感情が欠落している。「ご主人様」に言われたことには、なにがなんでも従う。自分は、殺される。
「本当に、残念。君とは友人でいたかったんだけど……君が少しばかり莫迦な行動をしたために」
波折がサイレンサーを篠崎の口に突っ込む。そして、安全装置を外した。
最後に、篠崎が見たのは――恐ろしく冷たい、波折の瞳。
「じゃあね、篠崎くん。短い間だったけど、友達でいてくれてありがとう」
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