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波折を殺さなかったのは、気まぐれだ。なんというか、妙に惹かれるものがあった。まだ彼は小さな子供だったから、顔が綺麗とかそんなものは全然わからないし俺も別にペドフェリアというわけでもないから彼を欲しいと思ったわけではない。なんとなく。本当になんとなくだ。面倒になったら、さっさと殺そうと思ってとりあえず生かしておいた。
冬廣家が波折を除いて惨殺されたということは、当然のようにすぐに明るみにでた。まだろくに言葉も話せない、俺の正体も知らない波折が俺のことを警察や裁判官に言うということもなく、俺はのらりくらりと逃げることに成功した。
ただ、俺は波折を手放したくはなかった。あれは本当に不思議な子供だ。漠然と、理由もないのに欲しいと思わせる、魅力を持っている。
波折は、親戚に引き取られることになった。ただその親戚はほとんど家に帰ることもなく、波折に構うこともない、そんな人達だった。ああ、これはちょうどいいと。その親戚たちが家を出ているあいだに、俺は空間転移の魔術を駆使して波折に会いに行くようになった。思えば、警察や裁判官の手をくぐり抜ける術を、俺は波折に会うために身につけていったのだろう。
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