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第1話
雨宿りに入った路地裏で、ばったりと会いたくないような会いたかったような人物と遭遇した。
「おや、副長さん」
「……よう、万事屋」
傘を差していた銀時だが、どうやら土方は傘を持ってなかったらしい。
「突然の土砂降りが災難だね。髪の毛びしょびしょ」
懐から出した手拭いをばさりと頭に被せると、邪魔臭そうに退けられる。
「犬の子みたいに扱うんじゃねー」
「だって、本当に犬みたいだぞ? よしよし、可愛い狂犬」
そんなからかい文句と共に土方の頭を撫でる銀時に向けられた、上目遣いで睨む視線と、前髪から垂れる雫が妙な色気を醸し出し。
思わずニヤける銀時の脛を土方は蹴飛ばし、頭に乗っている手の平を思い切り抓った。
「なにを気色悪い表情してやがんだよ」
「いやいや、突然の雨も乙なものだなぁ、とか思いまして。しかし冷えると風邪引くぞー、ちゃんと拭けよ」
ほいっと銀時が手拭いを投げると、土方はむすっとした表情で受け取り、ゴシゴシと頭から額を拭き始めた。
そして、土方の目元が手拭いで隠れた瞬間。
銀時は土方の肩を掴み、その唇を唇で塞いだ。
掴んだ肩がびくり、と震えたが、抵抗はしてこない。土方からすると、もう慣れたもんか? それも銀時にとっては寂しいが。
「……んんっ、うっ……」
しかし、喉の奥から漏れた、低い掠れ声に欲情して。冷たい雨で濡れた土方の唇に、銀時の唇から熱を与える。
「ふぅっ、と……」
そう唇を離しても、土方は手拭いで顔を覆ったまま、ピクリとも動かない。
照れる表情を隠したいのか?
ニヤける銀時を見たくないのか?
「ぶん殴られる前に帰りまーす。あぁ、その手拭いはお礼にやるよ」
そう笑って、銀時は雨の中を立ち去って行く。
「……ったく、畜生が」
ざあざあと響く雨音の中で、独り土方は呟いた。
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