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第77話

「………………朱雨?」 そう、どこからか聞こえてきたのは愛しいあの人の声だった 「いやだっ!玲、玲ぃ!!」 切羽詰まったようなその声に、心が締め付けられる なにがあった、どうしたんだ、辛いことでもあったのか………………とそばに行って声をかけて慰めてやりたい気持ちになる だが、自分にはその権利がない そんなつらそうな彼を慰められるのは、俺ではない誰かだ……………… そんなことを考えてしまい、心がズキズキ痛み、体が裂けそうになる 行くな、と言いたくなる 俺にしろ、と言いたくなる 朱雨、俺は本気でお前が好きだ、と言いたくなる だが…………それを言ったらまた朱雨にあの顔をさせてしまう……………… 「………………頼むから、話しかけないでくれ……」 未だに聞こえる朱雨の悲鳴にそう小さく呟くと 三角座りをし、膝に頭を埋めて、朱雨の声から逃げた………………

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