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第5話 夢だったの?
「優多、朝だ。起きろ。」
「うん。もう少し。。寝かせて。。」
「朝食の支度出来てるぞ。」
尊は優多の柔らかな髪を優しく指ですいた。
優多は、寝ぼけ眼を擦りながら起きると、制服に着替え始めた。
「ネクタイ俺がやってやろうか?」
「自分でやる!」
尊に言い切ったは良いが、どうにも上手く結べない。
優多が悪戦苦闘している姿を眺めながら、尊は意地悪そうな笑顔を浮かべ黙って見ていた。
優多は悔しそうな顔で俺を見た。
「どうした?俺にやって欲しいのか?して欲しいなら、ちゃんと口で言えよ。」
優多は尊の言葉を聞いた瞬間、昨夜の出来事を思い出し、顔が赤くなった。
尊は、他意無く言った自分の言葉に優多が反応したのを見て、内心にやけが止まらない。
こいつ…
さては昨夜の事を思い出してるな。。
一々可愛い奴だな。
そんな俺の心の内に全く気付いていない優多。
「尊兄、俺やっぱり出来ない。尊兄がして。」
今それを言うのか?
本当にこいつは始末が悪い。
俺は心の中で毒づいた。
尊は平静を装いながら、優多に近付き彼のネクタイを結びながら首筋をそっと噛んだ。
「あっ。。。」
優多の甘い声を耳にし、俺はもう一度ベッドに連れ戻し、彼を滅茶苦茶にしてしまいたい衝動に駆られた。
これ以上は駄目だ。
昨夜だけと決めた筈だ。。
はやる鼓動を抑えながら、自身にそう言い聞かせた。
そして、何事も無かったかの様にネクタイを締めた。
「先に行ってるぞ。顔を洗ったら来い。」
尊は、自分の決心が揺らがない様、足早にキッチンへと向かった。
2人で向かい合って座り朝食を取りながら、取り留めのない会話をした。
いつもと変わらない尊の様子を見て、優多は内心首を傾げていた。
さっきのアレは何だったんだろう…
単にふざけただけだったのかな…?
昨夜の出来事にも触れてこないし、もしかしたら夢だったのかも。。。
だとしたら俺は欲求不満なのか?
あんないやらしい夢をみて…
しかもその相手が尊兄だなんて!
そうだ。
きっと夢だったんだな。
あんな事ある訳無いよな。。。
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