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第7話 雅楽と雅。
優多は教室の机の上にうつ伏せになり微睡んでいた。
不意に後頭部を叩かれ、振り向くと九条 雅楽(くじょう がく)が立っていた。
雅楽は、以前通っていた学校のクラスメイトでもあり、優多がこの学校に転校した後、彼も仕事の都合で転校し、又同じ学校に通う事となった。
彼は飄々として何処か人を寄せ付けない雰囲気があるが、不思議と気が合い、いつの間にか一緒に居る様になった。
「お前…痛いだろっ!折角人が良い気持ちで寝ようとしてたのに!」
「お前は学校に何しに来てるんだ?此処は勉学に勤しむ場だぞ?」
雅楽はにやにやしながら言った。
俺は雅楽の言葉に苦笑した。
「学校にまともに来ていないお前にだけは言われたくない!」
「俺はモデルの仕事があるから仕方がない。」
雅楽は、そう言って肩を竦めて話を続けた。
「今日仕事がオフなんだ。帰りに映画観に行こうぜ。」
「私も行く!」
俺が返事をする前に後ろから声が聞こえた。
振り向かなくても俺達はそれが誰だか直ぐに分かった。
雅楽の双子の妹の雅(みやび)だ。
彼女はいわゆるブラコンってやつだ。
雅楽がこの学校に来る時に雅楽と離れるのが嫌で、一緒に付いて来た。
二卵性だが顔が良く似ている。
それなのにブラコンって。。
と思ったが、まぁ気にしない。
「俺は今、優多と話してるんだ。お前は自分の教室に戻れよ。」
「映画一緒に連れて行ってくれるなら戻ってあげる。」
2人のやり取りを聞いて、
「俺はまだ返事してないぞ。」と
口を挟んだが、2人が揃ってこちらを向き
「当然行くだろ?」
「当然行くでしょ?」と同時に言い放つ。
変なところで息がぴったりだ。
「俺も行きたいけど、今日は無理だ。尊兄が明日から二週間居ないんだ。その間、樹季の家から学校に通う事になったから、支度しないといけない。」
「そっか、じゃあ。又今度だな。帰りは一緒に帰れるだろ?ところで樹季って…」
雅楽が俺に尋ねようとしたが、
「ほらっ。優多のもう1人の…」と雅が言うと
「あぁ。そうだったな。」と彼は頷いた。
「うん。悪いな。」
「良いよ。じゃあ後でね~。」
そう言って雅は教室に戻って行った。
2人とは前の学校も同じだったので、2年前の事故の事も知っている。
当時、同級生達は腫れ物を触る様な態度で俺に接して来たが、雅楽と雅は俺に対する態度が事故前と何ら変わらなかった。
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