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第16話 ※

「廉佳さん……こ、これも…BLの参考になるの?」 「なるなる。むしろこっからが本番」 「へ?」 「せっかくだからさ、最後までヤっちゃおうぜ」  何がせっかくなのか分からないが、廉佳はまたベッドの下に手を伸ばしてボトルのようなものを取り出して泰志に渡す。 「ほら、これ使えよ。ローション」 「廉にぃ準備よすぎ……最初からヤらせるつもりだった?」 「いやいや、俺だって二十歳の大人だよ? 部屋にこーゆーのがあったっていいだろ」 「ふーん」  二人の会話を聞いているうちに胸がもやもやしてきた。  確かに廉佳はもう大人だ。地味で子供っぽい千世とは違って彼には華がある。誰かとそういう関係になることがあっても不思議ではない。 (もしかしてこれ、ヤキモチ?)  今もやもやしたり焦燥感に駆られたりしているのは、好きな人が目の前で別の相手の影をちらつかせるからだ。こんな気持ちになったのは初めてだから推測でしかないが、これは嫉妬。だと、思う。 (そういえば廉佳さんの相手って女の人? 男の人?)  BLが好きなのとゲイであることはイコールではない。もし廉佳が普通に女性のことを好きならば、千世に勝ち目はないということだ。 「――冷た! な、なに!?」  千世が考え事に耽っていると急に下腹部に冷やっとしたものが垂らされて、そちらに無理やり意識を向けさせられる。 「ごめんごめん、これ手であっためるんだっけ?」  ローションのボトルを手にした泰志が謝ってくる。なんの前触れもなかったので必要以上に驚いてしまったが、内腿を伝ってくるそれはさほど冷たくもなかった。

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