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空雅の場合/2

懐かしい夢から目覚める…まだ…眠っていたかったな…夢の中に閉じ込められたかったな… 現実に戻りたくなかったな… 「ふわぁぁぁ…」 「おはよ。空ちゃん寝坊助さんだね」 「はよぉ…」 「次はいつ会える?」 「わかんない」 「そう…わかったぁ。なら俺はお仕事行くね」 「ん…いってらっしゃーい…」 いつまでこんなこと続けるんだろう… 智輝と別れて俺には剣道しか残らなかった。 でも…結局続けることができなくて… …智輝を無理矢理諦めてまで選んだはずだったのに… あのとき…智輝のこと諦めないで命を失っていたとしても…それでも…智輝への想いを捨てるんじゃなかった… あのまま…智輝を好きなまま…命が尽きていた方がきっと…幸せだったかも知れなくて…それに… 「…こんなにも虚しい想いはしなくて済んだかもしれないのに…」 誰にも聞かれることのない僕の呟きは虚しく消えていく…

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