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第十二章 Hell of scenery
「――……」
今日で、退院できる、らしい。わりと、どうでもいい。
病院にいようが、学校に行こうが、何かが変わるというわけでもない。だって、俺には何もない。家にも、学校にも、俺には、居場所がない。
黒――だった、世界。色のない世界。今は――白に見える。結生に、……ああ、違う、藤堂に、別れを告げたそのときから。まるで俺には、「黒」という色すらもないと言わんばかりに、俺の世界からは、全ての色が消えた。ああ、そう、不安すらもないのだ。心が、まっさら。清々しい、気分。このまま死ねたら、気持ちいいだろう。
「――涙くん。お母さんがお見えになったわよ」
「……、」
居場所。俺の、居場所。病室にはいってきた、その人に。居場所のようなものが見えたけれど……
「……涙。ごめんね、一回もお見舞いにこれなくて……帰ろう」
……よく、わからない。
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