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第1話

 好きな奴に好きな奴が出来るかも。  そんな悲しい場面に出会ったりする人はいるだろうか。  元道基成(もとみち もとなり)は、今そんな状態だった。  目の前で告白されている好きな奴。そしてそれをただ見つめるしかない友達である自分。告白を遮れない自分に歯痒さを感じながらも、それを実行してしまう恐ろしさも十分知っているからこそ身動き出来ない。だから告白してきた彼に対し、羨ましさ半分、拒絶半分と言った面持ちで事の成り行きを伺うしかなかったのだった。 「こ……んなこと言うの……不快に感じるかもしれないけど…………。自分の気持ちにケジメをつけるためにも言わせてください。僕、あなたが好きですっ!」  そんなことを名前も知らない男子が口にする。 「好き? 俺のこと?」 「はいっ!」 「それは……どうもありがとう」 「…………あのっ……それで、出来れば付き合って欲しいんですけどっ!」 「…………俺と? 君が?」 「……はいっ!」  相手はゆるフワの髪をした可愛らしい男子だった。告白はちょっと必死で、ビクビクと相手の反応を期待する面持ちもあったりした。 「だって君、男の子じゃん」 「…………」 「それを承知で言ってるんだ」 「…………僕、女の子にはなれないですっ。男の娘になれって言うんならなりますけど……、それほど秋夜さんのことが好きなんですっ!」 「それは……ありがとう。でも俺……君の気持ちに答えられないと思う」 「…………それは……僕が男だからですか?」 「そうじゃなくて……。俺、好きなコいるから」 「そう……なんですか…………」 「うん。俺も好きなコ男だから偏見はないよ」 「ぇ…………」  それを聞いた告白男子は嬉しいような悲しいような複雑な表情をしてきたので、基成自身も心が痛んだ。 「俺さ、まだ告白してないんだけど君の気持ちはよく分かる。分かるけど……分かるから『いいよ』だなんて迂闊に言えないんだ。そこ、分かってもらえると嬉しいな……」 「はい……」 「……」 「でも僕……すぐにはあなたのこと、諦められないですっ。それでもいいですか?」 「思うのは自由だからね。だけどその気持ちに俺は今答えられない」 「はい…………」  傷心って言うのはこんな気持ちを言うんだろうと思う。  基成は好きな奴である加東秋夜(かとう しゅうや)が口にした言葉を告白男子と同じ気持ちで受け止めていた。 「…………ごめん」 「言えただけいいですっ。ありがとうございましたっ!」  そんなことを言って深々とお辞儀をすると立ち去ってしまった告白男子の背中を見つめる。 〇 「いいのかよ」 「何が?」 「男が好きとか言っちゃって」 「偏見はないって言ってるだろ?」 「ならいいけど」  ふたりして並んで歩きだすと、秋夜が聞いてきた。 「男が好きとか、やっぱ引く? お前は、嫌いか?」 「え?」 「やっぱりそんなこと言う奴は嫌いかなって思って」 「そ…んなこと……ないって…………」  秋夜は『美丈夫』と言う言葉がぴったりと合うような日本古来の美しい顔の黒髪短髪マッチョだった。そして基成はと言えば、彼とはまた別のちょっとチャラい雰囲気を持つ茶髪のロン毛マッチョなのだった。 「俺……の好きな奴。結構近くにいるんだよ。だから余計に言いにくい」 「へぇ…………」  それは、どこのどいつだろうと考えを巡らせるが、友達が多い秋夜だから皆目見当がつかなかった。考えながらもしばらく無言でふたりして歩き続ける。場所は車の行き交う道路の横。つまり歩道。車が通っているから喧騒がふたりを包んでいるのだが、それが逆に心地よくもあったりしたのだった。 「…………俺、基成のこと好きだよ?」 「俺も秋夜のこと…………ぇ……?」 「言っただろ? 俺の好きな奴は近くにいるって」 「ぇ……でも……それって…………。ウソ……みたいだ…………」 「俺のこと、否定する?」 「いや。そうじゃなくて…………」 「ぁ、気持ち悪い?」 「そう……じゃなくて…………」 「ごめん。突然過ぎたな。さっきのコに感化されたのかも」 「俺も……好きだから」 「うん?」 「俺もさっきのコみたいに言いたかった。でも……きっかけがなかったって言うか……。言ったら嫌われるんじゃないかって思うと言えなかった…………」 「そう」 「うん…………」 「だったら、俺たち相思相愛じゃん?」 「…………まぁ……。言葉にすればそんなとこだろうけど…………」  そう簡単なもんじゃないと思っていた。だけどそう思っていたのは基成だけだったようで、秋夜は嬉しそうな顔をして素直に喜んだのだった。 「だったら付き合おうよ」 「ぇ……」 「俺たち付き合おう」 「だけど……」  そんなに簡単でいいのかな……などと不安が過る。 「じゃ、今からデートってことで」 「え……」 「映画、行こうか」 「え……っと…………」 「まずは形からってことで、いいんじゃないかな」 「ぅ…うん…………」 〇  言葉通り形からと言うことで映画を観て食事をすると帰途に着く。でもこれは普通に普通で、友達の時と同じことをしているに過ぎなかったのだった。 「面白かったね」 「ぅん…………」 「…………楽しくなかった?」 「そ…んなことないけど…………」 「…………もしかして戸惑ってる?」 「うん。…………正直どうしていいのかが、まだ分からないって言うか…………」 「俺も戸惑ってる。でも基成の思ってることとは別だと思うけど」 「…………?」  それは何? と聞こうとしたが、結局言葉にはならなかった。でも言えるのは、これからどうすると言うことだ。 「俺ん家来る?」 「ぇ…ああ……うん…………」  来る? と聞いてきたのは秋夜のほうだった。ここからなら確かに基成の家より秋夜の家のほうが近い。だから必然的にそちらに行ったほうが都合がいいのだが、問題はそこからだった。  家に行ったら…………。  基成の予想は、まず最初に明かりをつけたらテレビをつけて「お茶でも飲むか」ってなってリビングのソファに落ち着く。いつもならそこであーだこーだと話をして「じゃあな」ってなるのだが……。  実際家に着いた秋夜は、鍵を開けると明かりをつけてリビングまでたどり着く。そしてテレビを……つけることはなかった。先に立って歩いていた秋夜がクルリと基成のほうを振り向いて向かい合う形を取ってくる。顔は真剣な表情で真っすぐに基成を見つめてくるので、基成もギクッとしながらも神妙な面持ちで相手を見つめるしかなかった。 「元道っ……。基成のほうがいいか」 「どっちでも……いいけど…………」 「俺は? 何て呼んでくれる?」 「何てって……。いつもの通り加東じゃ……ぁ、ごめんっ。秋夜……のほうがいいのか」 「うん。呼んでみて」 「秋夜」 「もう一回」 「秋夜……」 「うん。いい感じだね、基成」 「…………うん」  手が伸びてきて抱き締められる。その手が暖かくてちょっと和んだので、基成も彼の体に腕を回した。自然に顔が近づいて唇が重なる。 「んっ…ん……んんっ…ん…………」 「ふっ…ん……ん………ん」  舌を入れて絡ませながら体を弄り合う。腰を擦り付けて脚を絡ませてシャツの中に手を入れて、たくし上げながら相手の素肌の感触を味わった。でも…………。  ここまできた時に耐え切れずに基成は訪ねた。 「あのっ…………」 「なに?」 「どっちがどっち?」 「…………基成はどっちのつもり?」 「俺は……するほうだけど…………」 「俺もするほう」と秋夜が言った。 「やっぱり?」 「うん」 「どうする?」 「どうしようか…………」  抱き合いながらそんなことを口走るが、ふたりとも途中で止める気もない。 「入れなくても触りたい」 「うん。じゃあ脱がせっこして風呂に入ろうっ」 「うんっ」  一緒に風呂に入ったことがないわけじゃない。だけどこんな自宅の狭い風呂で、しかも意識してから見る裸はまた気持ちが違う。お互いに脱がせ合いながら全裸になると「本当に入るのか?」と目で探り合いながらも結局手を取り合って風呂に向かった。 「狭いな」 「うん。けど楽しい」  ただでさえガタイのいい男同士。狭いなんてもんじゃなかった。ふたりしてバスタブに入ったら身動き出来ないくらいだった。だから座るなんてとてもじゃないが出来なくて、ふたりして立ちながらシャワーを浴びて体を洗い合って綺麗にしてから握り合った。 「どうしたらいい?」 「どうって……。自分でするみたいにっ……」  だけど向かい合ってする行為は歯痒さしかなかった。 「面倒だなっ」  最初に言ったのは秋夜のほうだった。 「後ろ向けよ」 「ぁっ…」  クルリと反転させられた基成は股間を握られるとおもむろにしごかれ始めた。 「ちょっ……」 「黙ってろって」 「ぅ…うんっ……。だけ…どっ……当たってるっ……、お前のっ……俺の尻にさ……」 「大丈夫だよ。準備もなしに入るもんかっ」 「そうじゃ…なくてっ…………」  直接感じてしまうのに、どうしたらいいのかが分からない。自分のモノは秋夜にしごかれているので手持ち無沙汰な手は壁にやった。そして尻で彼のモノが蠢くのをひたすら感じるしかなかったのだった。 「あっ…あ…あっ……」 「気持ち…いい?」 「ぅ…うんっ………」  でも何て言うか……。  気持ちは複雑だった。  やっぱり心配が当たってしまったと言うのが大きい。お互いにしたい側だなんて、今後のことを考えるとどちらかが折れるしかないんじゃないかと思うからだ。そして基成は強引に彼をどうにかしようとは思ってないので、負けるのはたぶん自分だなと思うと自分の尻への労りが半端なくなってしまいそうで、ちょっと怖いものがあったのだった。 「俺っ……初めて他人のチ〇コ触った。ってか、しごいた」 「俺もっ……人にしごかれたの初めてでっ……。ぁ……ぁぁっ…でもっ……それより尻に熱いのが蠢くってののほうがっ……」 「ブルッて来てる? 俺っ、もうブルッって来てるから」 「ぁ…ぁ…ぁぁっ……ぁ……」 「擦っていい? 尻に擦るだけっ……。入れないし、入れれないからっ」 「ぅ…ぅんっ………。いいよ。擦ってっ……! 俺の尻にっ……尻の穴、擦って……!」  何を言っているのか。自分でもよく分かっていない内に口に出していた。自分だけが触られている罪悪感と言えば聞こえはいいが、ようするに尻の穴のほうでも感じたかったと言うか……。相手を気持ち良くさせたかったと言うのもあると思う。基成は言いながら自ら尻を彼に突き出して喘いでいた。 「もっとっ……! もっと擦ってぇぇっ……! 俺の尻の穴っ……! 気持ち良くしてぇぇっ……!」  最後には甘えた声を出していたかもしれない。基成はモノをしごかれながら尻を刺激されて腰をくねらせて悶えていた。それが浴室内に響いて恥ずかしいことこの上ないのだが、やめられない。 「あっ! あっ! あっ! ぁぁっ……んっ! んっ! んっ!」 「あああっ……! いいっ! お前の尻っ……! 擦って擦ってっ……!」 「あっ……! あっ! あっ! んんっ……!!!」  容赦なく擦られてしごかれて、基成は浴室の壁に勢いよく射精していた。そして秋夜も数秒差で基成の股に射精していた。 「ぁぁぁ…………」 「ふぅ…………」  ガックリとふたりとも力が抜けてしまった。膝がガクッと折れる勢いで座り込みそうになるのをどうにか支えられてバスタブの縁に腰を降ろす。抱き締められて全面的に彼に体を委ねて甘えてしまうのを抑えられなかった。 「基成……。俺、ごめん。お前に入れたいっ」 「…………うん……。何か……俺も今、尻の穴でメッチャ感じた…………」 「じゃ…じゃあ」 「……うん。俺……し……秋夜の……好きかも…………」 「ホントに?」 「うん…………。でも……俺……まだまだだから……その…………しゃぶらせて欲しい……」 「ぁ、ごめん。俺ばっか楽しんだみたいになっちゃって…………」 「……」 「いいよ。しゃぶって……。俺を喘がせてくれよ」 「うん……」  耳元でそんなことを言われて尻の穴が感じてしまっているのに気づきながら相手の股の間に座り込むと萎えているモノを口に含んで舌で味わう。  俺っ……。俺、コレ入れたいっ…………。入れて味わいたいっ…………!  彼のモノをしゃぶりながら自分の尻の穴に指を入れる。射精したモノから滴る精液を穴の潤いにしてグチュグチュと拡張させると秋夜を迎え入れる準備をしていた。 「んっ…んっ…んんっ…ん…………」 「ぁぁぁっ………ぁ……ぁ…………。もっ……となり……基成……基成っ……! もぅっ……」  我慢の限界だと言う口ぶりに基成はハッとしてモノから口を離した。 「ごっ…めんっ……。やり過ぎた…………?」 「いや。こっちこそごめん……。気持ち良すぎてっ…………」  向かい合って言葉を交わすのに笑みを絶やさない。基成は潔く背中を向けると初めての言葉を口にした。 「入れても……いいよ」 「……うん……」 「ぁ、むしろ入れて欲しいっ……。俺、秋夜のモノになりたいっ……。入れられて感じて受け止めて……」 「うん。うん、俺も……基成の中に射精したいっ。中で……出していい?」 「勢いよく出してっ……俺をメチャメチャにしてっ!」 「……うん」  腰を屈めて尻の肉を自ら開くと相手を受け入れる姿勢を取る。秋夜はそんな俺を見ながら自分のモノをしごくとソレを押し当ててきた。 「入れるよ……?」 「うん……」  基成の返事を聞いた秋夜がグググッ……! とモノを押し入れてくる。 「ふっ……ぅぅ! うっ……! ぅ…………」 「ごめんっ……ごめんなっ……! 俺のっ……大きくてっ…………」  でももっと中に入れたいっ! と口にしながら押し進んでくる。 「うっ…! うっ…! うっ…! ううっ……ぅ…」  出来るだけ体の力を抜こうとしても、それがままならないのに今更ながら気づく。基成は浴室の壁に頬を引っ付けながら喘ぎ、入れられたところへ意識を集中させていったのだった。  ヒクつくっ……! 秋夜のモノが俺の中にっ……入ってくるっ! ドクドクするっ……! 俺のじゃないドクドクっ……。 「あっ! ああ……んっ! あんっ! あんっ! あんっ!」 「あああ…………。お前のこのっ……胸筋っ………! 小さな乳首っ……。無駄のない腹筋にっ……股の……付け根っ……! ずっとずっと触ってみたかったんだっ……」 「あっ! あっ! あっ!」  尻の肉を開いているせいで自由が利かない。基成は彼にモノを握られてしごかれながら乳首を摘ままれて身を捩って喘いだ。 「いい声っ。いい声だよ、基成っ……。それにココの大きさも……堅さもっ……感度も……。とてもイイッ……!」 「あああ……んっ!!」  色んなところが敏感になっていた。彼の手の中で弾けてブルブルッと身を震わせる。でもまだ彼が満足していなかったので、彼を受け入れたままどうにかしようとするのだが、体がガクガクッとして言うことを利かなかったのだった。 「ぁぁぁ………ぁ……」 「基成っ?!」 「ご…めんっ……力が……」 「分かった分かった。じゃあ外に出て膝をついて俺を受け入れてくれ」 「ぅ……ん……」  入れられたままゆっくりとバスタブから出ると風呂場の床にひれ伏す感じで後ろから彼を受け入れる。 「あっ! あっ! あっ! ……んっ! んっ! んんっ! んっ……!」  グイグイ後ろから攻められて逃げるにも逃げられない。腰をしっかりと掴まれて何度も何度も突き上げられる。 「んっ! んっ! んっ!」 「もうちょいっ……! ごめんな。もうちょいっだから……!」  根元まで入れるのに躍起になっている秋夜に、それをヘナヘナになっている基成は受け止めなければならなかった。  立て直す時間も……ないなんて…………。  ちょっと悔しくもあったが、気持ち良かったから許す。腰を掴んでいた手がだんだん肩に移動してきて、そこここの筋肉を確かめるように触られる。突き上げられて撥ねる体に彼のモノを受け止めるとズルリと彼が出ていった。そうなってからようやくお役御免になったのだと分かりグッタリと力を抜いたのだった。 「ふ…ぅぅ…………」 「大丈夫か? やり過ぎた? ごめんっ! おいっ! おい、って!」 「大丈夫……。でも何か…………」 「ごめんっ。最初から無理させちゃって……」  ギュッと抱き締められると耳元で「ホントごめん。でも良かったよ」と言われて口元が揺るんだ。 「ほんとに?」 「ああ」 「だったら良かった。俺も……良かったから…………」  基成も彼の背中に手を伸ばすとギュッと抱き締め返した。それから二人で体を洗い合うとお互いの筋肉を触り合って股間を擦り合わせてもう一度射精をすると風呂を出た。  次の日。管理会社から喘ぎ声に関しての苦情電話があり落胆。これからふたりは場所を選んでしないといけないな……と反省したのだった。 終わり タイトル「付き合う頃合い」20180615

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