1 / 1
プロローグ
少年はその場に呆然と立ち尽くした。
その手から鉛筆が落ちて転がっていく。
口はだらしなく開かれたまま。
少年は衝撃を受けた。
彼は絵が上手かった。
それなのに、彼は描けなかった。
目の前のキャンパスは、
純白を表す真っ白なまま。
少年は描けなかった。
書くことができなかった。
「……無理だ」
少年は絵で初めて諦めた。
彼には描くことができなかった。
【家族】という絵が
彼には描くことができなかった。
6歳の少年は、
その年齢で2度目の挫折を味わった。
ともだちにシェアしよう!