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公平無私→sideS

「真壁ェ、オイ、オマエいかねえのか、報復」 いかにも恐ろしい形相をした赤い頭の男が俺の机の上にケツを降ろして、手に鉄パイプをもって俺の顔を見下ろしてくる。 顔が近いし眉の間の皺がこえーなあ。 せっかくのイケメンなのにもったいないなー。 これは武闘派富田派のリーダーである、富田君である。 去年は俺のところにいたのだが、俺が知らないうちに出てってしまった。 それでもは俺のことが気になって仕方ないらしく、ことあるごとに、タイマン張ろうと絡んでくるのだから、俺のことが好きならうちに居ればヨカッタのにとは思う。 悪い子じゃないと思うんだけどね。ちょっとばかりめんどくさい。 「んー、それでさ、何人やられたの?」 しょうがないから、話だけでも聞いてあげよう。 友情は今のところはこの子とはないけど、情けはひとのためならずとじいちゃんも言っていたからな。 聞いてあげるくらいはしてあげよう。 英語の先生が授業始めているけど、富田君は俺の机の上を占領しているし、教科書も開けないことだし。 別に聞いたからといって、中1の内容の復習だし、やっても仕方ないんだけどね。 「金崎のとこ、30人病院送りだ」 1対30でボロ負けしてんじゃねえとも思うけど、相手が化け物のハセガワだったらそれくらいは、仕方ないよね。 「うわー、30人かァ。相変わらず化け物だねえ……。俺、勉強するから、富田君どいてくれるかな」 ガサガサともう三学期だけど新品に近い英語の教科書を取り出して、わざとらしく富田君の脚の上においてノートを机のはしっこに設置する。 「ハッ、ビビッてんじゃねえよ、真壁。ウチ高校のヤツが30人もやられたんだぞ」 「金崎は、何やってアイツ怒らせたの?……昔から、ハセガワはそんなに無茶はしねえっしょ」 大体適当に相手したら、病院送る前に逃げさせてくれるし深追いはしない。 それがハセガワのやり方だ。 敵としては、戦ったことはないけど…………よく知っている。 自分からどこかをつぶそうとかいう動きをしたという話も聞かないし、彼の性格上それはありえやい。 こっちから絡まなきゃ、反撃してこない部類のヤツだ。 「相棒、拉致ってマワしたみたいだけど……」 マワしたって……………そら、怒るだろう。 それに、相棒の日高にというのは、そこは地雷だ。 ちょっと殴っただけで、酷い報復を受けたって話もよく聞くし、実際知っている。 日高は見目麗しいイケメンで、ハセガワはガキのころからヤツを大事にしているのも、俺は知っている。 「ああ…そりゃヤバイ………わ。アイツの相棒には手ェ出したら、ヤバイ。中学ン時、東高の先輩のクラスをひとりで潰したらしいし」 「で、オマエは加勢しねえの」 鉄パイプ片手に、イライラしながら詰め寄る富田君に、俺は英語の教科書をぱらぱらとめくる。 普段は、こんな教科書をめくったことはあんまりないので、勉強するふりだ。 めくらなくても出来る範囲の勉強だ。 「俺、死にたくないからパス。…………そんな怖いトコいけないわー」 ビュッツ!! あぶね………。 肩をそびやかしながら、俺に振り下ろしてきた鉄パイプを英語の辞書で受け止めた。 「テメェ、東高がなめられていいってのかァ!」 「どう考えても、卑怯な手ェ使った金崎が悪ィ。そのための報復はヤメとけ」 「…………内添のヤツも……似たようなこと言いやがって……どいつもこいつもビビッてんじゃねえ」 「こっちが卑怯な手ェ使ったのに、報復とか、そんなカッコわりいことできねえだろ?」 じいちゃんも、因果応報という言葉を良く使っていた。 「富田君さ、そんでもいくの?」 英語の先生は、いつものことのように鉄パイプ振り回している生徒がいても、われかんせずに授業をすすめている。 まあ、アルファベット書ければ単位もらえるんだけどね。 余裕すぎて、なんとも言えない。 「………」 悩んでいるといった表情で、俺の顔を睨みつけてくる。 そんなに俺が嫌いなんだろうか。 別に俺もそんなに、富田君のことが好きじゃないけど。 髪の毛の色も真っ赤だし、なんだか暑苦しくて、めんどくさいし。 「我慢しときなよ、怪我するし。富田君のトコの子たちも無駄に病院いきたくないでしょ」 「テメェ、俺らが負けるといいたいのかよ?」 授業中なのに、英語の先生よりも大きい声を張り上げている。 まあ、授業なんて誰も聞いてないけどね。 「たとえ負けないにしても、確実に怪我すんだろ?」 親切で言っているんだけどな。 大事なもの傷つけられて気が立っている鬼のトコに言ったら食い殺される。 そんなこと分かりきっている。 「テメェのその何でも分かってるみてえな、そういう上からの言い方がきにくわねえ。数じゃ一番かもしんねえけどよ!!覚えておけ」 バンっと俺の机を鉄パイプで殴り、机の中央がめしゃっと陥没する。 勉強しにくいんだけどな、こんな派手な盆地つくられちゃうと。 もう一回留年したら、さすがに一生面倒みてもらわないと困っちゃうぜ。 「……まァ、俺ントコは今回いかねェ。富田君トコはスキにしなよ。そうだねえ、忠告しとくよ。入院者でもたくさんだしたら、俺らが幅利かせられるチャンスになるって、先に言っておくよ」 俺がウインクして見せると、富田君はかーっと顔を赤くして、鉄パイプでガンと床を殴って俺の机から脚をどかして、大股で、プリプリしながら教室を出て行った。 直情径行な性格は別に悪くはないんだけどね。嫌いじゃない。 だけど、いちいちめんどくさい。 「士龍さん、大丈夫です?」 ちょっと遠目で見ていた直哉が、ひょこひょこと俺に近寄ってくる。 「べつに大丈夫よ、机がねー、ちょっとひねくれちゃったくらいだからー。このままひねくれて非行に走ったらどうしようかな」 「俺の使ってください…………まだ、真っ直ぐなイイコなんで」 「アリガトウ。俺の机、ひねくれてるけどナオヤならきっとイイコに育てきってくれると信じてるぜ」 俺は直哉に机を取り替えてもらい、とりあえず簡単すぎる英語の授業へ参戦した。

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