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黒い感情

ある日、洗面台の前で割れた鏡に映っていた自分の姿を見た。向こう側にいるのは、歪んだ自分の姿だった。 自分が歪んでいるのか、それとも向こう側の自分が歪んでいるのかは、今となってはわからない。ただもう一人の自分が鏡の向こう側で笑っているような気がした。 だからその姿を、私は『私』を見ていた。歪んだ姿を見ながら首を小さく傾げた。そしたら、もう一人の自分も同じく首を傾げた。   私は向こう側にいる自分に向かって片手を上げて『やあ』と挨拶をした。そのあと、目が覚めた。あれが夢か幻かも今となっては、どうでもいい事だ。 だけどあの日、私は不思議な事にもう一人の私に出会った。そして、それが今も自分の中にずっといる。内側から精神は蝕み、やがて壊れる。その時に、私はまたもう一人の『私』と出会うだろう――。

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