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─見返り─

「ああ、そうだ……! リン、リンは…――!?」  慌てて駆け寄るとリビングの窓から庭の様子を覗いた。庭には枯れた木の下に落ち葉が沢山散らばっていた。そして、犬小屋の鎖は切れていた。その光景を見て涙が溢れ落ちた。 「何でだよ……!? 何で居ないんだよリン!」  其処には誰もいない。父さんも母さんもリンもいない。家には俺だけが一人取り残されていた。 『わぁあああああああああああーーっ!!』  その時、俺の中で何かが崩れ落ちると堪らずに大声で泣き崩れた。悲しくて切なくてもどかしい気持ちに胸が一気に押し潰されると、ひたすら泣いた。いつもと変わらない風景がそこにあるのに、丸で俺だけが『いない』ような世界がそこに広がっていた。 「何でだよ……!? 父さん母さん、何処にいるんだよ! 俺は此処にいるよ、俺は此処にいる! だからだから、どうか忘れないで…――!」 悲痛な声で心の底から叫んだ。孤独に支配された感情から吐き出した言葉。俺には、それが精一杯だった。もうそれ以上の言葉が見つからない。 いつか自分が忘れ去られてしまうような、そんな恐怖心が心の中で増すばかりだった。だから俺は蹲(うずくま)って泣き続けた。そんな時、背後から誰かの気配を不意に感じた。 「兄貴……!?」  一瞬、兄貴の気配を感じて後ろを振り向いた。そして、そこで夢から目覚めた――。   

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