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第8話

「美好さん、起きてください。」 朝、誰よりも心地の良い声で僕を起こしてくれるのは大好きな僕の番、桜井くん。 「美好さんはやく起き上がって下さいよ〜。」 朝に弱い僕はなかなか目を開けることも出来ないし何よりも、なかなか起き上がることが出来ない。 「ん〜…、ちょっとまって、あと少しだけ…」 「ちょっとあんた…、仕事どうする気…っていうかなんか顔赤くないですか?」 そう言われてみればなんだか少しだけ身体が熱いような気が。 「ちょっと待ってくださいね。」 ボーッとする頭で色々考えていると冷たい額が僕の額にコツン、と当たった。 「ちょっ、斗真くん近い…っ!」 「え〜?いいじゃないですか番なんだし。それより不意打ちで名前呼ぶのやめてくれません?照れるんで…。」 みるみるうちに僕と同じくらい顔が真っ赤になっていく桜井くん。 「それよりやっぱり美好さん熱ある。今日の仕事休んでくださいね。皆には俺が言っておきます。」 「え!それは無理だよ!僕が休んだら…っ「ごちゃごちゃ言わないで寝てください、じゃないとそのうるさい口塞ぎますよ。」」 ……どうしてこの男はこんな恥ずかしいことを真顔で言えるんだろう…。 だけど、そんな桜井くんもかっこよくてついつい目を逸らしてしまったらもう桜井くんのペース。 素早い手つきで額には冷えピタを貼られて横には体温計を置かれて布団をかけられて、最後にはほっぺに優しいキスを落とされる。 「ゆっくり寝てくださいね、美好さん。」 僕の世話をしながら自分の支度も済ませた桜井くんはドアノブに手をかけながら家を出る前に一言。最後まで優しいお節介だ。 ……僕がこの格好良い男と番になったのはつい1年前の事だ。あの日から僕の周りは一変した。…まぁ、潔癖症は相変わらずだが…。

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