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第1話 妄想力豊かな不思議な世界の住人 調教編
久しぶりに会う親友が「旨いカクテルを作るバーテンがいるんだ」と言い、その行きつけのバーにやってきた。
「あれだ」
俺は親友が指差す方向へ目をやる。小さいが落ち着いた雰囲気のある店だった。親友がドアを開け入った。
マスターは俺達に微笑み、お辞儀をするとカウンターの席へ促した。妙に色気がある男で、ルックスもスタイルも申し分ない。
来店した客の顔と名前、味の好み全て覚えていて優しい笑顔と物腰の柔らかな彼は男女問わずファンが多いと親友の楠木基哉(くすのきもとちか)が絶賛するバーテンダー。口元にあるホクロが笑顔で緩む度、そのホクロに見惚れてしまう。
男性に言うのは失礼だろうか……とても美人だ……
「久しく会ってなかったけど、元気だったんか?」
「ああ……元気だよ。ちょいちょい仕事も増えてきたし」
隣に座った俺の親友、基哉とは中学生からの仲だ。派手というわけではないが、成績優秀で人懐っこくて何でも器用にこなすこいつは、クラスの人気者だった。
俺、柊木紅太(ひいらぎこうた)はある程度成績も良く、何でも器用に出来た方だが、基哉と違い興味のない事にはまるで無関心だった。ただ、静かに好きな物を集め眺めているような性格の俺とは真逆のなのに、何故か馬が合った。
俺のちょっと変わった趣味にも興味を持ってくれたり……お互いある程度の距離感でいられる基哉は、一緒にいて楽な友人だった。
基哉は器用さを活かし一級建築士になり、今じゃ若手一級建築士で有名だ。
俺はグラフィックデザイナーの企業に入社し、今から三年前に退社。変わった趣味である、紙の専門・名刺デザイン「ひいらぎ堂」を開業した。
「そっか、この前の紙良かったからまた頼もうと思ってな。本当助かるよ」
「いや、こちらこそ贔屓にして貰って助かってる」
「酒何飲む? 俺、ジャンディ・ガフ。紅太は?」
「じゃ……フレンチ・コネクション」
「かしこまりました」
マスターが優しく微笑んだ。俺はまた口元のホクロを目で追ってしまう。いけないと思い、マスターの手元に目を移した。
ロック・グラスに氷を入れる。ブランデーとアマレットを入れ、軽くステアした。マスターは俺の前にコースターを置き、グラスを置いた。
「お待たせしました。お口に合わなければおっしゃって下さいね」
「あ……りがとう」
基哉はビアをジンジャエールで割ったカクテル。
「どうぞ、楠木様お待たせしました」
「ありがとう。じゃ! 乾杯!」
そう言ってグラスを俺らは軽く合わせた。
琥珀色の液体を一口含んた。ブランデーとアーモンドのようなアマレットの芳しい香りが口に広がる……
「うん、甘さが俺好みで旨いよ」
「だろ! これも旨いよマスター」
「ありがとうございます」
俺はマスターの笑顔を見ながらもう一口飲んだ。
「へぇ〜〜お前、マスター好みか?
「ぐっ! おい! 変な事言うなよ」
俺は口に含んだ酒を吹き出しそうになった。こいつは俺の隠したい性癖に気付いていて揶揄ってくるのだけど、嫌悪されたり拒絶するよな態度しなかった。寧ろ理解してくれていると俺は思っている。
「あっ! そうだマスターあれこいつにやってくれないか? きっと興味持つよ!」
少し考えたマスターは何かを思い出し、ポケットから名刺入れを取り出した。一枚出し俺の方へ差し出した。マスター名刺を受け取るとふわっといい香りがする。
香り付きの名刺?
「これは……」
俺は興味深々でマスターから受け取った名刺を目で追う。
「花屋と植物聴香実験室kou ……植物精油調香師 立花香……?」
「あ……ここは副業でして、そちらが本業なんです」
「調香師……?」
「はい、そうです」
「あっ! 失礼……」
名刺を差し出し、受け取った立花が微笑んだ。
「柊木様の事は楠木様から伺っています」
「おまえ何を話したんだ?」
「いや……別に」
「おまえな……」
「親友が名刺デザイナーなんだって教えて下さっただけですよ」
そう言って立花が優しく微笑んだからそれ以上、基哉を咎められなかった。
「で! マスターの香りと紅太の名刺デザインコラボってどうかと思ってな。興味あるだろ?」
「え? それは興味あるけど……」
二杯目のフレンチ・コネクションをコースターに置いた立花をちらっと見た。立花は頷きニコリと微笑むと右手をスッと出した。
「ええ、是非」
「本当に?」
「はい、どうぞよろしくお願いします」
「いえ! こちらこそ!」
俺はしたたに酔っていた。差し出された立花の手を勢いよく握った。触れたのは一瞬だったが、ひんやりと冷たくて離すのが名残惜しいと思う程、俺は酔っていた。
「マスターに色々教わるといいよ」
「ん? あ……そうだな」
「色々……ね……」
基哉は立花に頷くと、二杯目のジャンディ・ガフを飲み干した。
酒の席での話しなのだろうと俺は、思っていたんだけど……
*
それから数日が過ぎ日々の忙しさに、あのバーの一件を忘れかけていた。
お得意先へ納品した帰り道、俺の携帯が鳴った。知らない番号からだったが、携帯をタップして耳近付けた。
「はい、柊木です」
「あっ! 柊木さん? 立花香です。覚えてらっしゃいますか?」
「あ! 立花さんどうかされましたか?」
「この前の香りと名刺のコラボの件、お話ししたくって……」
「すみません! こちらからご連絡しなくて今から伺ってもよろしいでしょうか」
「はい、構いませんよ」
「では、お伺いします」
通話を切り急いで「花屋と植物聴香実験室 kou」へ向かった。
*
「花屋と植物聴香実験室 kou」は、洒落た店で見た目はカフェかと思ってしまう。俺は店の入り口のドアを開けた。
「こんにちは! お待たせしてすみません」
「いらっしゃいませ。柊木さん こちらこそ来て頂いてすみません」
「全然! 構いませんよ」
立花が優しく笑った。バーテンの格好もいいが、今日の白衣に白の開襟シャツ、細身のデニムも素敵だった。口元のホクロと捲り上げた袖から覗く白い腕に一瞬、目がいったが慌ててさ逸らした。
コンクリート打ちぱなしの壁のスタイリッシュな店内。そしてほのかに漂うアロマの香り……
「素敵なお店ですね」
「ありがとうございます」
なんとなく俺は、ガラス棚に並ぶ小さな褐色瓶を手に取り蓋を開けた。
この香り……立花さんの名刺と同じ香り……
「この精油はネロリですね。オレンジの花から取れる精油です。オイルマッサージ体験されますか?」
「オイルマッサージ? 男でもいいものなんですか?」
「勿論! 店に来られる男性のお客様に人気なんですよ。どうぞこちらで服を脱いで下さい」
立花がカーテン開け、俺は促されるまま中へ入り服を脱いだ。
「うつ伏せで横になって頂けますか」
マッサージベッドに横になると、立花が大きめのバスタオルを身体に掛け、手にアロマオイルを伸ばした。
「では、始めますね」
両肩に立花が触れオイルで滑らかになった手が肌の上を這う。
花の蜜や、柑橘系の皮を絞ったときの苦味や、花弁や、木の葉や皮の香りのようなとても心地よく瞼が自然と閉じていく……
「……言い忘れていましたが、香りに簡単に心を許さないで下さいね。あ……でも、もう遅かったみたいだね。柊木さん」
香りに誘われ視界が閉ざれる______
「……ここは……」
薄暗い室内。身体が香るネロリの香りに眩暈がした。上半身を起こすと軋む音がする。周囲をぼんやり眺め人の気配がする方へ目線を向けた。
「起きた? 柊木さん」
白衣姿の立花香(たちばなこう)が、こちらに近づいてくる。
「あ…れ……立花さん?」
「君がね……香りに心を許してしまったから」
右手を動かそうとしたが、縛られていて動かなかった。
「これは……どういうことだ」
「俺にこうされたかっただろ?」
立花の手が俺の肌に触れる。鎖骨から胸のへ滑っていく……
「止めろ! 離せ!」
腕を激しく動かして抗う俺を立花が笑う。初めて会った時の優しくて、物腰の柔らかな立花とはまるで別人だ。
「君が誘ったんだよ。バーでもここでも俺の口元のホクロ見ながら俺の裸、想像してただろ?」
「そんなこと……」
「ない……?」
立花がベッドに膝を掛け、横になっている俺に乗せ馬乗りになった。
白衣の下の開襟シャツのボタンをゆっくり外す。細身だか、無駄のない整った身体と妙に妖艶な腰から尻にかけてのラインを目で追った。それだけで自分の身体が火照り始める……立花の身体に性的な欲求を感じてしまう。俺には刺激が強すぎて目を逸らした。
「その目……男に興味あるって言ってる。触った事はない? こうやって……」
立花は自分の胸の辺りを見せつけるように触る。手の動きや、指で胸の突起を摘んでみせた。
クソ!!
「へぇ……これだけて勃った?」
立花は俺の耳元に近付き囁く。
「……変態」
上から見下ろして立花が笑う。主張し始めた俺のを下着上から立花が触れた。上下に刺激される度、甘美な痺れが身体を這っていく。
「あっ! やめ…ろ!」
「男の感じるところここだけじゃなく、ここも教えてあげる」
「やめて、それだけは……」
立花の指が誰も触れた事のない尻の割れ目を這って、後孔を刺激する。
「……やだ!!」
「大丈夫、最後までしないよ今日ね。でもここでイケるまで何度もしてやるから」
「どうして君が、こんな僕なんかと……」
「だから言ったでしょう。誘ったのは君の方だって」
立花が小さな小瓶を傾け、自分の手に垂らすと俺の尻の割れ目にするりと滑らせ、そこをほぐし始める。ネロリの香りがまた俺を酔わせる。
「あっ、やっ! ん……っ!!」
「……絞ま…る…俺の指ちぎれそう。ちょっと緩めて……柊木さん」
「……そんな…の無理…に決まってる…あっ! そこ…やめろ……やだって……」
「気持ち良くなるまでこっちも触ってやるからさぁ……」
気持ち悪い筈なのに俺のモノは、完全に立ち上がり淫らな汁で下着を濡らす。
「あぁ〜〜もう下着、邪魔!」
「んっ!!」
唯一の身に着けていた下着も剥ぎ取られた。恥ずかしいと思う間もなく、一度抜いた指がまた入ってくる。中を掻き回し、内壁を擦り出ていきまた中へ……ある部を擦られ身体か痺れる。
「そこ! なんか……それ、やめ……ろ!! あっ、い…やっんっ! あっ! 」
「凄い……一気に濡れてきた。見て今、指二本入ってるよ……ここ気持ちいい?」
「分かるかそんな……変になり…そう……」
「イキそう? 俺の指でイッて」
「いっやだ!そんな……激しくしたら!」
立花は俺の中へ入れた指を激しく動かす。淫らな音と、激しい息遣いに身体の奥が疼きもっと奥へ欲しいと内部が畝る。
「柊木の中……気持ちいい……」
「……やぁ! いっっっく! あぁっっ!」
俺は何度か身体を痙攣させ、身体の熱を吐き出した。それを立花が手で受け止め、指に付いた吐き出したものをペロリと舐めた。
「……素質があるよ柊木さん。俺…堪んなくなった」
服越しでも分かる位、立花のモノが熱く主張し固くなっていた。
「……本気にしてもいい?」
「…最…後までしないって!」
立花はデニムのジッパーを下ろし、熱くて淫らな汁で濡れているモノを俺の後ろに押し付けた。
「……もっと」
「俺だけに見せる顔、見せてよ」
「……や! 入れないで!!」
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「……やだ! 立花さん!」
「……はい?!」
肩で息をしながマッサージベッドから起き上がた俺を見て、立花は驚いた顔をしていた。
あれ……?
「どうかされましたか? 魘されてましたけど」
夢だった事に気付き、恥ずかしいやらで俺は立花の顔を見れない。
なんで夢を……俺は……
「いや……すみません寝てしまって」
「お疲れのようでしたので、少しはすっきりしましたか?」
ゔっ!! 違う意味ですっきりしたっていうか……物足りないっていうか……
「すみません! いや……俺…帰ります。また、今度は具体的に話しを進めていきましょう」
「はい、そうですね」
服を着て身なりを整えた。立花は俺を店のドアまで見送ってくれる。
「柊木さん、今日はお忙しいのにありがとうございました」
「こちらそ! 次回はこちらから連絡させて頂きます」
「お待ちしております。次は……最後までしましょうね」
え……?
立花が俺の耳元で囁いた。そして優しく微笑んでお辞儀をする。こんな優しい笑顔人が、あんな淫らな事するなんて……
まさか…な……俺…どうかしてる!
「いや、えっと…では失礼します」
「はい、柊木さん」
店を去っていく柊木の背中を立花は、妖艶な笑みを浮かべ口元のホクロに触れた。
「次は必ず……柊木さん」
立花の姿が霞み、ふわっと店内へと漂った……
【END】
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