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第5話
「まぁ、瑛翔ならその気になればすぐに彼女の1人や2人出来ると思うぜ」
「そうだね…って、あっ、もうこんな時間っ」
スマホで時間を確認した桐崎さんが慌てたように言う。
「え?あー…門限21時なんだっけ?」
隣の祥馬も一緒に時計を確認した。
「うん、お父さんが厳しいんだ」
「じゃあそろそろ帰ろうか。送る」
「ありがと。瑛翔くんも、今日はありがとう」
祥馬に笑顔を向け、そしてこちらに顔を向けて俺にまで俺を言う。
「いや…俺は別に…」
そんなこんなでファミレスの外に出て、そこで解散した。
「じゃあまた明日な!」
「ん」
「またね〜」
ひらひらと手を振られ、振り返してから俺は家に向かって歩き始めた。
"可愛いだろ?"
"気づいたら好きになってた"
頭で反芻される祥馬の言葉。
「あー…そりゃ、高2にもなれば彼女くらい出来るよ…」
口に出した自分の言葉に、傷ついた。
それでも、好きだと、祥馬に伝えるつもりはない。
俺の方が好きなんだ、なんて、言えるわけない。
それに、2人とも幸せそうだった。
それを壊すなんて、俺には出来ない。
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